SAPとは? 機能・特徴・製品種類をわかりやすく解説(vol.85)

  • 公開日:2022.10.10
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「SAP(エス・エー・ピー)」と言えば、一般的にSAP社が提供しているERP(統合基幹業務)システム=企業内の各部門で独自に管理されている経営資源を一元化するために開発されたシステムを指します。SAP社が提供しているERPシステムを導入することによって、業務の効率化や経営の意思決定をスピーディーに行えるため、世界中の多くの企業で導入されています。
また、かつては大企業向けのシステムでしたが、近年ではクラウド型も提供されており、中小企業でも導入しやすい環境が整ってきています。

本ブログでは、SAP社が提供しているERPシステムの基本的な特徴や機能、製品のラインアップなどをわかりやすく解説します。

SAPとは?(意味や日本での利用状況とは)

まず、SAPという言葉の意味や、SAP製のERPシステムが日本でも幅広く利用されている背景などを解説します。

SAPの意味とは?

SAPは、1972年に元IBM社員がドイツ中西部のヴァルドルフに設立したソフトウェア会社です。
SAPは、「System Analysis Program Development」(ドイツ語:Systemanalyse und Programmentwicklung)からとった名称であり、読み方はサップではなく「エス・エー・ピー」です。システム分析とプログラム開発の両方の意味を持っています。
SAP社が提供するERP製品にも「SAP」という言葉が付いていることから、一般的にはSAPと言えば会社名よりもERP製品を指すことが多いかと思います。

<SAP ERP製品の歩み>
1973年に、財務会計ソフト、いわゆるSAP R/1が開発されました。
1979年に、メインフレーム方式のSAP R/2をリリース。SAP社はSAP R/2を第1世代と呼んでいます。
1992年に、第2世代で、クライアントサーバー方式のSAP R/3をリリースしました。同時に日本法人のSAPジャパンが設立され、ここから日本でも爆発的にSAPユーザーが増えていきます。
2004年に、SAP R/3の後継で、第3世代となるECC5.0 をリリースし、2006年に現在まで受け継がれているECC6.0 が登場しています。
2011年に、インメモリーデータベースのSAP HANAが登場。SAP BW on HANAやSAP Business Suite powered by HANAなどを経て、2015年に第4世代となるSAP S/4HANAをリリースしました。

ERPシステムをパッケージ化した製品である「SAP ERP」や、その後継製品である「SAP S/4HANA」を採用している企業は、世界190カ国で44万社以上、日本でも約2,000社ほど存在するため、安心して利用できるでしょう。

SAPが日本でも幅広く利用されている背景

SAP製のERPシステムが日本でも利用されるようになったきっかけとしては、1990年代前半に起こったBPR(業務プロセス改革)が挙げられます。これにより、日本でも多くの企業が「基幹システム」を本格的に導入しはじめました。

1990年代はメインフレームからオープンシステムへの移行が進み、しばらくすると2000年問題(Y2K問題)などが起こったこともあり、世界中で企業情報システムを刷新する急速な動きが見られました。
こうした時流に乗って、独国SAP社の「SAP R/3」をはじめ、米国PeopleSoft社の「PeopleSoft」やJ.D.Edwards社の「OneWorld」、Oracle社の「Oracle Applications」、オランダBaan社の「BaanERP」といったERPパッケージ商品が続々とリリースされました。

また、デジタル端末の普及や通信環境の整備によって、消費者の購買行動が変化したことも、SAP製のERPシステムが広く利用されることになった要因として挙げられます。

昨今では消費者のニーズが多様化しており、業務の効率化やスピーディーな意思決定など、企業活動そのものを改善するための取り組みが欠かせません。そのような取り組みを実現するための手段の一つとして、SAP製のERPシステムの導入が拡大しているのです。
さらに、以前は大企業向けの汎用型システムが主流でしたが、近年では中小企業でも取り扱いやすいクラウド型やSaaS型のERPなどの開発やリリースも手伝って、現在では企業規模を問わず幅広く導入されるようになりました。

このように、競合他社との差別化を図り、消費者の変化に対応していくために、SAP製のERPシステムは広く活用されているのです。

ERPの概念とSAP ERPの基本的な特徴とは?

前述の通り、一般的にSAPと言うと、SAP社が提供しているERPシステムをパッケージ化した製品を指します(ERP以外のSAP製品もあります)。そのため、そもそもERPとは何かをしっかりと把握しておきましょう。本章では、ERPの概念とSAP ERPの基本的な特徴を解説します。

ERPとは?

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業全体の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報など)を適切に分配して有効活用すべく、経営資源を統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念を意味します。ERPシステムとは、この手法を実現するためのシステムであり、すべての業務を一元的に管理する全部門共通のシステムのことです。

ERPの概念が生まれる前までは、企業全体で1つのシステム開発を行うケースは稀で、一般的に各部門が独自にシステム開発を行っていました。会計や人事、生産といった業務を部門ごとに独自システムで管理する仕組みです。

部門ごとに最適化したシステムでは、その部門の業務は効率化できていても、企業全体で見ると非効率な面が多くありました。特に、部門間の情報やデータ共有はそれぞれの部門で管理の仕方が異なるため、収集したデータを管理できるようにさらに整理し直すといった作業が必要でした。

データ整理や管理の作業が複雑な手順を踏むほど、入力ミスなどリスクも発生しやすくなります。それらの欠点を解消するために、ERPシステムは開発されました。

ERPパッケージとは?SAP ERPの特徴

会計や人事、生産や販売といった部門の情報を一元化するシステムを一から作る方法は、膨大な手間やコストがかかるため、あまり現実的とはいえません。
こうしたハードルの高さを解消するために生み出されたのがERPパッケージです。ERPパッケージをサーバーにインストールするだけで、手軽にシステムの導入が行えるため、多くの企業で利用されるようになりました。

特にSAP社が提供しているERPパッケージ製品(SAP ERP)には次のような特徴があります。

  • グローバル企業への導入実績が多い
  • さまざまな業種に対応した標準機能が豊富にそろっている
  • 多様なインフラ展開をサポートしてくれる など

SAP ERPは、世界的な大企業での導入実績が多くあり、長く使い続けられているという安心感があります。さまざまな業種や業態に対応した標準機能を搭載し、各国の法制度や商習慣にも対応している点が、多くの企業から指示されている理由といえるでしょう。さらに、デジタル化やクラウド化など、多様なインフラ展開にも対応しており、使い勝手に優れている点も大きな特徴です。

また、SAP社はERPパッケージ製品以外にも、購買ソリューションや経費精算ソリューションなど、個別の業務効率化につながるアプリケーションも豊富に提供しています。

SAP ERPに備わっている主なモジュールとは?

「モジュール」とは、SAP ERPを構成する業務領域単位の機能群を指します。具体的には、会計システムや在庫管理システムなどのことです。複数のモジュールが集まって、SAP ERPが構成されている点をおさえておきましょう。

ここでは、代表的な9つのモジュールについて解説します。

  • 財務会計(FI)のモジュール
    FI(Financial Accounting)は、決算書などの作成や固定資産、債務・債権管理などを行うために必要な機能を備えており、基本的には社外向けに財務諸表を作る目的で活用されます。
    ほかの販売管理モジュールなどと連携して、自社の売上や支出を自動的に計算できるため、経理作業の負担軽減にもつながります。
  • 固定資産管理(FI-AA)のサブモジュール
    FI-AA(Asset Accounting)は、固定資産の取得や減価償却計算、処分などプロセスに関わる処理を行う機能を指します。固定資産の取り扱いが多い業種において役立つサブモジュールだといえるでしょう。
  • 管理会計(CO)のモジュール
    CO(Controlling)は、管理会計の業務をカバーする機能のことです。部門単位の業績管理や間接費の管理など、主に社内向けの会計を行う機能に対応しています。
    管理会計のモジュールを活用することで、自社の経営状況をグラフ化したりレポートを作成したりする手間を大きく削減することが可能です。コスト管理やコスト分析を適切に行うことで業務改善に取り組めるほか、販売実績などをタイムリーに把握できるため、スピーディーな意思決定にもつなげられるでしょう。

    *ご参考ブログ「SAP FI CO を用いたデータ分析とは?(vol.40)

  • 販売管理(SD)のモジュール
    SD(Sales and Distribution)は、販売管理に関する業務を行うときに必要な機能です。受注、出荷、請求などをリアルタイムで一元的に管理します。
    商品の販売状況や出荷、納品といったさまざまな手続きを行えるほか、これらの作業に必要となる見積書や納品書、請求書などの作成もできます。
  • 在庫購買管理(MM)のモジュール
    MM(Material Management)は、在庫の入出庫管理や棚卸管理などの在庫管理機能です。資材やサービスの購買から発注、入庫など購買と調達をサポートする機能だといえます。
  • 生産管理(PP)のモジュール
    PP(Production Planning and Control)は、生産管理を担う機能を指します。生産計画、在庫管理、原価管理を着実に行うことができるほか、異常品の管理や歩留まり率の管理などの生産効率を把握できるERPパッケージもあります。

    *ご参考ブログ「SAP MM SD PP を用いたデータ分析とは?(vol.12)

  • プラント保全(PM)のモジュール
    PM(Plant Maintenance)は、プラント保全を担う機能を備えています。検査、予防保全、修理の3つの機能で工場や各種プラントのメンテナンスを支援することで、安定的な稼働の実現に寄与します。
  • 品質管理(QM)のモジュール
    QM(Quality Management)は品質管理を担う機能で、品質計画や品質検査、使用決定のプロセスを担います。QMモジュール単体で使うことは少なく、MMモジュールなどと連携して使われることが一般的です。
    QMモジュールを使うことによって、品質検査と在庫状況を自動連動させることができるため、より高度な在庫管理が可能になります。
  • 人事管理(HR)のモジュール
    HR(Human Resources)は、人事、人材管理、勤怠、給与計算などを担う機能です。多様な人事管理業務に対応しているため、人的資源を最大限に活用したいときに役立ちます。
    HRモジュールのなかには、社会保険やマイナンバーの管理、シフト管理などの機能を備えているものもあります。

    *ご参考ブログ「SAP SuccessFactorsへHRモジュールを移行する方法とは?(vol.60)

SAP社が提供しているERP製品の種類とは?

ERPパッケージや各モジュールの特徴を把握したところで、さらにSAP社が現在提供しているERPパッケージ製品についてもおさえておきましょう。それぞれの製品の基本的な特徴を解説します。

*過去に提供されていたものを含むSAP製ERPパッケージの変遷については「SAP R/3 から S/4HANA へ ~ERPの”これまで”と”これから”~(vol.46)」をご覧ください。

SAP ECC (ERP Central Component)

「SAP ECC」は、従来のSAP R/3に相当する製品であり、後継となる製品はSAP S/4HANAとなります。2027年末までは条件付きではありますが、メインストリームサポートを受けることができます。

SAP ECCはWindowsやUNIXといったさまざまなプラットフォームで動作するクライアント・サーバー型のERPパッケージ製品です。必要なものを自由にカスタマイズできるので、自社の業務に合ったシステムを構築できるのが大きな特徴だといえます。

SAP製のERPパッケージの追加開発をする際は、SAP社独自のプログラミング言語であるABAP(Advanced Business Application Programming)で開発を行います。特に日本企業の場合は、独自のスタイルで業務効率化に取り組んでいるケースが多く、標準機能だけではうまく対応できない場合があるため、ABAPを用いて独自の機能を追加開発することがよくあります。

標準機能で各業界や地域の特性に合わせた商慣行に対応しつつ、独自の機能を追加することにより、自社の業務にとって必要な機能を補うことができます。

SAP S/4HANA

「SAP S/4HANA」は、インメモリーとカラムストアを活かした高速データベースである「SAP HANA」をデータベースとしたSAP ECCの後継製品です。2015年2月に発表され、2016年からは日本でも利用できるようになりました。

従来のSAP ECCとはアーキテクチャが大きく異なっており、1992年にリリースしたSAP R/3以来、23年ぶりの大規模なイノベーションとなりました。SAP S/4HANAは、単にインメモリーデータベースを使ったERPというわけではありません。新技術によって、ユーザーインターフェース (UI) の変革、データ構造の変革、ビジネスインテリジェンス (BI) の変革の3つを同時に実現しています。UXを考慮した設計が施されているため、作業を行う手順がシンプルであり、そのうえデータ分析やレポーティングをすべて同じシステムで行えるため、スピーディーな運用を行えるでしょう。

SAP S/4HANA Cloud

「SAP S/4HANA Cloud」は名称のとおり、SAP S/4HANAのSaaS型ソリューションです。
2022年9月現在、「SAP S/4HANA Cloud」には2つのエディションが存在します。

  1. SAP S/4HANA Cloud Public Edition
  2. SAP S/4HANA Cloud Private Edition

上記「1. SAP S/4HANA Cloud Public Edition」は、用意されたモジュールから、必要な機能と不要な機能を選択することにより短期間での導入が可能です。また、半年ごとにアップデートが行われるため、常に最新のリリース環境で使用できるといったメリットがあります。

*各エディションの違いなど、詳しくは「SAP S/4HANA Cloud とは?(vol.57)」をご覧ください。

RISE with SAP

RISE with SAPは、SAP S/4HANA Cloudを中核とした様々なSAPソリューションを包括的に提供するクラウドサービスです。
2023年2月現在、「RISE with SAP」には2つのエディションが存在します。これは、コアとなるSaaS型ERPシステムである「SAP S/4HANA Cloud」自体に2種類のエディション(Public/Private)が存在するためです。

  1. RISE with SAP S/4HANA Cloud Public Edition
  2. RISE with SAP S/4HANA Cloud Private Edition

*RISE with SAPに含まれるソリューションやエディションの違い、オンプレミス版のSAP S/4HANAライセンスとの違いや、RISE with SAPの採用により享受できるメリット、SAP ECC6.0からRISE with SAPへの移行方法など、詳しくは「RISE with SAP とは? ~オンプレ版との違い・メリット・移行方法をわかりやすく解説~(vol.90)」をご覧ください。

GROW with SAP

GROW with SAPは、SAP S/4HANA Cloud Public Editionを中核としたSAPソリューションを包括的に提供するクラウドサービスです。
2023年10月現在、「GROW with SAP」には2つのエディションが存在します。コアとなるSaaS型ERPシステムである「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」自体は共通ですが、バンドルされているライセンスに違いがあります。大きな特徴としては、どちらのエディションでも、SAP BTPの一部ライセンスやデジタルアクセスライセンスがバンドルされていて、クイックなスモールスタートが可能な点です。
*デジタルアクセスライセンスについては、「SAP デジタルアクセスライセンス とは?(vol.65)」をご覧ください。

  1. GROW with SAP S/4HANA Cloud, public edition, base
  2. GROW with SAP S/4HANA Cloud, public edition, premium

SAP Business ByDesign

「SAP Business ByDesign」は、2007年に発表された製品であり、36の業務プロセスに対応しています。SaaS型のERPパッケージであるため、導入までの期間が短く、初期費用を抑えられるのが特徴です。

SAP Business One

「SAP Business One」は、主に中堅・中小企業の活動を1つのシステムで網羅的に管理できるERPパッケージです。豊富な標準機能が備わっているので、多くの地域の商習慣に対応できます。

SAP S/4HANA や RISE with SAP って、正直何ができるの?
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SAP社が提供しているERP以外の製品の種類とは?

SAP社は、ERPパッケージ以外にも、次のような製品を提供しています。

SAP Customer Experience

「SAP Customer Experience」は、旧SAP C/4HANA(その前はHybris)のことです。データクラウドの「SAP Customer Data Cloud」を土台としており、5つのクラウドサービスによって構成されています。

SAP BW/4HANA

「SAP BW/4HANA」は、2016年にリリースされたSAP BWの後継製品であり、計算処理速度などが向上しています。従来のSAP BWでは10種類のデータモデリング用のオブジェクトが用意されていましたが、これらを4つに減らしたことによって、よりシンプルなデータモデルを設計できるようになりました。
*詳細は「SAP BW/4HANAとは? BWからの移行検討ポイントを解説(vol.2)」をご覧ください。

SAP BusinessObjects

「SAP BusinessObjects」は、リリースから25年以上が経過しており、130を超える国や地域で多くの企業に導入されている製品です。データのレポーティングやビジュアル化、共有機能などが一元化されているため、さまざまな情報を活用したいときに使いやすいBIフロントエンドツールだといえます。
*詳細は「SAP BO BI ( BusinessObjects Business Intelligence ) の機能・導入効果を解説!(vol.43)」をご覧ください。

SAP Analytics Cloud

「SAP Analytics Cloud」は、予測分析や計画、ビジネスインテリジェンス(BI)などさまざまなアナリティクスが1つになったSaaSソリューションです。直感的な操作が可能であり、主な機能として次のものが備わっています。

  • 総合的な意思決定支援(SAP Digital Boardroom)
  • 可視化・自由分析・データ検索(SAP Analytics Cloud for BI)
  • 予算・計画管理(SAP Analytics Cloud Planning)
  • 機械学習による予測・影響分析(SAP Analytics Cloud Predictive)
  • ユーザー管理などを行う共通プラットフォーム

SAP Analytics Cloudには、データの良しあしを素早く判断するために必要な機能が多く備わっており、可視化されたデータによって意思決定をスピーディーに行うことができます。データ分析に関する専門的な知識は不要で、ガイドに沿って操作することで高度なデータ分析が可能です。

また、ビジネスインテリジェンスやデータサイエンスの知識がない人でも、ボタンを押すだけで手軽に予測分析を行えます。エンタープライズプランニング機能では、機械学習を活用することで、企業の現状と将来のビジネスを把握して計画予測を行います。

ビッグデータのなかからビジネスチャンスを見つけ出すだけでなく、同時にリスクの推測も行ってくれるため、経営判断や意思決定に役立てられるでしょう。

*詳細は「SAP Analytics Cloud とは?予測分析をビジネスに活用しよう!(vol.70)」をご覧ください。

SAP Concur

「SAP Concur」は、経費の精算や出張管理、請求書管理ができるクラウドシステムです。SAP Concurの利用者数は世界で7,500万人以上おり、約16兆円分の経理処理を行っています。

スマートフォンのカメラで領収書を撮影し、経費や交通費の精算がどこでも行えるという経費精算の手軽さが特徴です。また、経費計算や承認といったプロセスを簡略化できることから、経理担当者の工数削減にもつながっている点も支持されている主な要因といえるでしょう。日本国内における導入企業も多く、2021年度の電子帳簿保存法の改正などにも対応しています。

*ご参考ブログ「SAP Concur とは? 経費精算システム3製品の機能を比較評価(vol.66)

SAP Ariba

「SAP Ariba」はクラウド型のシステムであり、調達管理を行えるサービスです。企業の間接材購買に関する業務をサポートしてくれるもので、業務の効率化やコストの低減などに役立ちます。

SAP SuccessFactors

「SAP SuccessFactors」は、人材採用や人材育成、労務管理に至るまで人事に関する業務全般をクラウドで行えるサービスです。
労務関係は法改正がたびたび行われるため、SAP ERPとは異なるサーバー上にSAP HRを構築し、運用しているケースも少なくありません。しかし、SAP SuccessFactorsを利用すれば、そうした作業が不要となり、業務をより効率化できるでしょう。

*ご参考ブログ「SAP SuccessFactorsへHRモジュールを移行する方法とは?(vol.60)

SAP Fieldglass

「SAP Fieldglass」は、人材シェアリングのプラットフォームであり、1999年のリリース以来、180ヶ国以上にサービスを提供しています。SAP Fieldglassは、納品・検収・支払い・請求処理といった事務作業の効率化だけでなく、蓄積されたデータを基にさまざまな分析を行い、人材採用の最適化を図ってくれるのが特徴です。

SAP BTP(Business Technology Platform)

SAP BTPは、SAP社が提供しているPaaS型のシステム基盤であり、アプリケーション開発/自動化/統合(インテグレーション)/データ管理・分析/AIといった複数の機能を、SAPアプリケーション向けに最適化された単一のプラットフォーム上で提供しています。わかりやすく言えば、SAP BTPは、個々のシステムではカバーしきれない、するべきではない共通的・統合的な機能を提供するプラットフォーム(機能群)のことです。
*SAP BTPは、SAP製品そのものの拡張を行う基盤ではありません。

*SAP BTPの機能・特徴・サービスなど、詳しくは「SAP BTPとは? ~機能・特徴・サービスなどをわかりやすく解説~(vol.100)」をご覧ください。

SAP“2027年問題”とは?

SAP ERPのメインストリームサポートは2027年末に終了となります。そのため、SAP ERPユーザーは、それまでにSAP S/4HANAへ移行するか、新たなERPパッケージを導入するかの選択を迫られています。これは「2027年問題」と呼ばれており、どのような対応を行うべきか把握しておく必要があります。
2027年問題の概要と具体的な対応策について、詳しく解説します。

2027年問題とは?

2027年問題は、もともとSAP社が提供するERPパッケージ(SAP ERP)のサポート期限が2025年末に設定されていたことに端を発しています。世界的なシェアが高いサービスであり、日本国内でも2,000社以上が導入しているため、SAP ERPのサポート終了は、導入企業にとって大きな影響を及ぼす懸念がありました。

しかし、「業務への影響が大きく、対応策がまだ準備できていない」、「これを機にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進めるための時間がほしい」といったユーザーの声を反映し、2020年2月SAP社は保守サポート期限を2年間延長し、2027年末までとすることを発表しました。

そのため、現在これらの問題は「2027年問題」と呼ばれています。2027年問題の対応策は大きく分けて3つあるので、それぞれの方法について解説します。

2027年問題への対応策

現在、SAP ERPを利用しているユーザーにとって、2027年問題への対応策は次の3つが挙げられます。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

  1. SAP S/4HANAへの移行
    具体的な対応策としてまず考えられるのが、「SAP S/4HANA」への移行です。SAP S/4HANAはSAP社が提供している最新のERPパッケージであり、SAP社自身もSAP ERPからSAP S/4HANAへの移行を推奨しています。そのため、SAP ERPのユーザーにとって優先度の高い対応策であり、しっかりと検討することが大切です。

    SAP S/4HANAに移行するメリットとしては、SAP HANAという高性能のインメモリデータベースを使用していることや、Fioriという優れたUI・UXを利用できることなどが挙げられます。また、SAP S/4HANAに移行することで、最新の技術や機能、サポートを受けられる点も魅力だといえるでしょう。

    一方で、SAP S/4HANAに移行する場合、以下の点に注意を払っておく必要があります。
    ・正しい業務のあり方を検討する
    ・SAP ERPとSAP S/4HANAのFit & Gap
    ・集約されたデータの活用法を考える

    それぞれの点について、さらに詳しく見ていきましょう。

    <正しい業務のあり方を検討する>
    SAP S/4HANAを導入するにあたって、現在行っている業務を新しい機能で置き換えられないかを十分に検討する必要があります。
    日本企業では、ERPパッケージを導入するにあたって、現在の業務に合わせるためにアドオン開発を行っている事例が多くあります。短期的には仕方がない部分もありますが、SAP S/4HANAの機能を上手に使いこなすことによって、業務そのものを簡素化していく工夫が必要です。

    <SAP ERPとSAP S/4HANAのFit & Gap>
    SAP ERPからSAP S/4HANAに移行する際は不具合が起こらないように、事前にどのような対応が必要になるかを洗い出しておくことも重要です。
    具体的には、PoC(Proof of Concept)や事前アセスメントを実施することが有効な手段といえます。現在の環境と新たな環境に移行したときの影響をあらかじめ把握しておきましょう。

    <集約されたデータの活用法を考える>
    さらに、SAP S/4HANAへの移行ばかりに注目するのではなく、一元管理したデータをどのように活用していくかという点も改めて見直してみるとよいでしょう。
    ERPのそもそもの目的は、集約したデータを分析することで、経営資源を無駄なく最適に活用することにあります。そのため、リアルタイムで収集される多くの情報をどのように経営に反映させていくか、十分に検討しておくことが大切です。
    集約されたデータの活用という視点に立つことで、AIやSAPソリューションなどの活用、外部ソリューションとの連携などの選択肢も明確になるでしょう。
    いずれにしても、SAP S/4HANAに移行するにあたって、どのように活用していくかを考えることが必要です。

  2. 代替製品への切り替え
    ERPパッケージは、SAP社が提供しているもの以外にも数多くあります。たとえば、国産のERPパッケージであれば、国内の法規制への対応やアドオン開発などが柔軟に行えるメリットがあります。
  3. SAP ERPの継続利用
    SAP ERPは、延長保守費用として現行の保守基準料金に2%相当の金額を追加負担することで、2030年末まで3年間の保守サポートを延長することが可能です。いずれサービスは終了するため、根本的な解決方法とはいえませんが、十分に時間をかけて次の方法を検討したい場合は、選択肢として覚えておくとよいでしょう。
    *ご参考ブログ「SAP ECC を継続利用するために知っておくべき3つのこと(vol.42)

SAP S/4HANA や RISE with SAP への移行って、正直どうすればいいの?
~ 迷っているすべてのSAPユーザーに、
S/4HANA移行検討時にありがちな「3つの誤解」をご紹介します!! ~

SAPユーザーの動向は? ユーザー意識調査アンケート結果を配布中!

2027年問題を受け、SAPユーザー企業は一体どのような対応を実施あるいは検討しているのでしょうか?
実際にSAP S/4HANA移行を控えたユーザー企業の声を集めたアンケート調査の結果を確認してみましょう。

弊社は、SAPソリューションのユーザー企業260社超に対して実施した独自調査をまとめた『SAPユーザー企業意識調査結果2023年度版』を発行しております。
本調査は、「SAP S/4HANA」移行に向けた準備状況や今後の動向、「SAP S/4HANA」移行・導入後の課題や今後の検討事項など、SAPユーザーの現状が詳細に記載されています。また、過去3年間の時系列分析により、SAPユーザーの状況の経年変化を知ることもできます。誰でもダウンロードいただけますので、是非、ご覧ください。

調査結果サマリー

  1. 「SAP S/4HANA」移行済みユーザー比率は約10%増加
    2022年度の調査結果と比較すると、「SAP S/4HANA」ユーザーの比率は約10%増加しており、「SAP S/4HANA」の導入が進んでいることが推察できます。
  2. 「SAP ECC」ユーザーの想定する「SAP S/4HANA」への移行方針は、「コンバージョン」が最多(61社、32.3%)
    2023年度の調査結果では、「SAP ERP Central Component(通称 ECC)」ユーザー企業の内、「コンバージョン」を想定している企業が61社(32.3%)で最多となりました。
  3. 「SAP ECC」ユーザーが検討中の「SAP S/4HANA」のプラットフォームは、「パブリッククラウド」が最多(64社、36.4%)
    2023年度の調査結果では、「SAP S/4HANA」ユーザー企業の内、「パブリッククラウド」が検討対象となっている企業が64社(36.4%)で最多となっています。その他、「SAP HANA Enterprise Cloud(通称 HEC)」を検討中の企業が6.3%、「RISE with SAP」を検討中の企業が23.3%あり、今後も「SAP S/4HANA」のプラットフォームは、クラウドが主流になるものと推測できます。
  4. 「SAP ECC」ユーザーが妥当だと思う「SAP S/4HANA」移行の費用は、「1億円~3億円」が最多(44社、26.5%)
    2023年度の調査結果では、「SAP ECC」ユーザー企業の内、「1億円~3億円」が妥当な移行費用だと考えている企業が44社(26.5%)で最多となっています。

本レポートでは、「SAP ECC」ユーザーの想定値のみならず、「SAP S/4HANA」移行済みユーザーの実績値も掲載しているほか、過去3年間の時系列分析も掲載しております。是非、ご覧ください。
*本レポートのフルデータは、こちらからダウンロード可能です。

SAP S/4HANAへの移行事例

弊社では、2027年問題を受け、実際にSAP S/4HANAへ移行したユーザー企業の事例コンテンツをWeb掲載しております。
今後の移行プロジェクトの改善点のご参考になるかと思いますので、是非、こちらも併せてご覧ください。

大和ハウス工業株式会社

SAP S/4HANAへの移行に向けて発足させたアセスメントプロジェクトにおいて、アセスメントツール「Panaya」と電通総研が提供するSAP S/4HANA アセスメントサービスを採用。精度の高い事前検証を短期間で実現しました。

株式会社FOOD & LIFE COMPANIES 様

「スシロー」をはじめ多彩なフードサービス事業を展開する株式会社FOOD & LIFE C OMPANIES。同社は国内グループの会計システムとしてSAP ECC6.0を利用してきましたが、グローバルビジネスの強化に向けSAP S/4HANAへの移行を決断。Panayaを活用し、2021年12月から1年間でプロジェクトを完了しました。

*2024年1月1日に電通国際情報サービス(ISID)は、電通総研へ商号変更しました。
 上記事例コンテンツの社名/サービス名/その他の情報は発表当時のものです。あらかじめご了承ください。

まとめ:SAPの基本的な仕組みや機能を理解して、業務の効率化を推進しよう

今回は、SAPの基本的な特徴や役割、SAP社が提供している製品などを解説しました。
SAP ERPを活用することで、各部門が保有しているデータを一元化し、業務効率の改善や意思決定のスピードを速めることが可能です。2027年問題に向けて今後の運用を改めて考えるためにも、自社が抱えている現状の課題を洗い出したうえで、必要な対応策を実行してみましょう。

最後に、電通総研が提供しているSAP関連ソリューションについて紹介します。

電通総研のSAP関連ソリューション

独立系のSIベンダーとして、SAP ERPなどのさまざまなERPパッケージを取り扱ってきた電通総研は、1995年のSAP ERP取り扱い開始以降、サービス提供から導入後の保守まで、豊富なノウハウを蓄積しております。

2009年にはSAP ERPデータ連携ツールである「BusinessSPECTRE」をリリースし、SAP社からSAP Certifiedアプリケーションとして認定されました。また2019年には、SAPパートナー・パッケージ・ソリューションの承認を取得した「SAP S/4HANA移行トータル支援サービス」をリリースしております。さらに2021年には、製造業のSAPユーザー向けの品目別実際原価計算システムである「ADISIGHT-ACS」をリリースするなど、SAP ERPビジネスの取り組みを積極的に継続してきました。

電通総研は、SAPに関するお客様のさまざまな課題を解決するために、多くの独自ソリューションをご提供しております。SAP ERPをご利用中の場合はSAP S/4HANAへの移行支援を、またSAP ERPデータの活用やSAP ERPの継続利用などをご希望の場合は、EhP適用やクラウド移行を含めた最適なご提案をさせていただきます。

近年は業種や業界、地域を問わず、SAP S/4HANAの導入や業務効率の改善、経営の意思決定の迅速化など、AIやビッグデータの活用によるDX実現が求められています。長年SAP ERPビジネスに取り組んできた電通総研では、お客様の現状や将来的なビジネスに沿ったご支援が可能です。
2027年問題への対応を含め、SAP S/4HANAへの移行や運用などでお悩みの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

電通総研は、SAPパートナー・パッケージ・ソリューションの承認を取得している「SAP S/4HANA移行トータル支援サービス」をご提供しております。
SAP S/4HANAへの確実な移行を支援するサービスであり、アセスメントから移行本番までのプロジェクトについてワンストップでご支援させていただきます。
SAP移行をご検討の際は、是非、電通総研へお声掛けください。
https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-s4hana-assessment/

本記事は、2022年8月31日時点の情報を基に作成しています。
製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、電通総研のWebサイトからお問い合わせください。
https://erp.dentsusoken.com/inquiry/