SAP BW とは? 意外と知らないBWの基礎知識(vol.19)
- 公開日:
- 最終更新日:
SAP NetWeaver Business Warehouse(以降、SAP BWという)は、SAP社が提供するデータウェアハウス製品です。SAP BWは、データの抽出・変換・集約・分析(レポート作成)などの機能を有しており、多くのSAP ERPユーザが利用しています。
本ブログ記事では、SAP S/4HANAシステムへの移行を検討されているSAPユーザの皆さまに向けて「意外と知らないSAP BWの基礎知識」をご紹介します。実は、日々当たり前のように利用/管理しているSAP BWの継続利用には意外な落とし穴が潜んでいるのです。その落とし穴を正しくご理解いただいたうえで、”SAP BWをSAP BW/4HANAへ移行する際には何を検討すべきなのか?”を解説します。
目次
SAP BWとは?
SAP BWは、SAP 社が提供する、SAP ERP専用のETL機能(データを抽出し、格納するためのツール)と、データウェアハウス、レポート機能が一つになったパッケージ製品のことを指します。
SAP BWは、SAP ERP内外のデータを蓄積して分析を行うことが可能です。SAP ERPシステムとのインターフェースを標準で装備しているだけでなく、非SAPデータの取り込みはファイルインターフェースあるいはBAPIインターフェースで行えるため、SAP ERPと外部データを別々にSAP BWに取り込んで統合し、レポートを作成が可能です。
また、SAP ERPをカスタマイズする場合と同じように、SAPの独自プログラミング言語であるABAPでアドオン開発ができること、誰がどのデータを閲覧できるのかを細かく権限設定できることなど、一般的なBIと比較してアーキテクチャ上の優位性を確立しています。
SAP BWの主な機能
- データ抽出:
標準のユーザインターフェースとしてSAP Business Explorer(以下、BEx)アナライザを提供しており、他アプリケーション間のデータもマルチキューブ(複数キューブのデータを統合した、レポーティングを行うための仮想キューブ)の使用により、比較的容易にデータを統合して分析を行うことができます。
※Business Explorerは、Webブラウザで利用可能な「BEx Browser」と、 Microsoft Office(Excel)をユーザインターフェースに用いた「BEx Analyzer」の2つのモジュールで構成されています。 - データ格納:
SAP ERPや既存システムなどのソースシステムからのデータは、まずインフォパッケージと呼ばれる機能を実行することで、一次保管場所としてのPSAにそのまま(書式の変更はされないまま)取り込まれます。その後、データ転送プロセス(DTP)によって変換処理が行われ、インフォキューブやデータストアオブジェクト(DSO)などのターゲットにデータが格納されていきます。 - レポート開発:
SAP BWでは、誰でも使える分析ツールとしてBExアナライザを提供しています。BExアナライザは多次元分析が可能なSAP BWの中心的なフロントエンド製品であり、Excelベースであるため、初めて使う方にも使いこなせるのが最大の特徴です。 - システム管理:
基本的な機能であるコンピュータセンタ管理システム(CCMS)や権限作成、開発オブジェクトの移送や修正なども、SAP ERPと同様の機能となっているため、SAP ERPのシステム管理者の方には容易に運用できます。また、SAP BWでは、管理ツールとして「アドミニストレータワークベンチ」を提供しており、すべての管理をこのワークベンチの画面で集中的に管理できます。 - ビジネスコンテンツ:
SAP ERPの各モジュール(一般会計、人事管理、販売、購買、顧客管理、電子商取引など)で定義されたデータをSAP BWでレポーティング、多次元分析するため、あらかじめ用意された開発テンプレートです。
※SAP BWのデータ抽出(ETL)機能、レポート機能、ビジネスコンテンツに関しては、こちらのブログでより詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
https://erp.dentsusoken.com/blog/bw-system-vol-39/
SAP BWの保守期間終了は2027年の前にやってくる!?
実は、SAP BWの保守終了期間は2027年の前にやってくるのです。
衝撃的な事実ですね、皆さんご存知でしたか?
SAP ECC6.0のメインストリームサポート終了は2027年に延長されたのに、これではSAPシステム全体としては利用できないのでは?と不安になってしまいますね。
少々驚かせてしまいましたが、詳しく解説すると以下の通りとなります。
- SAP BW7.5より前のバージョン(7.3や7.4等)は、2020年12月末で保守期間終了
- SAP BW7.5は2027年12月31日に保守期間終了
実は、自社で利用されているSAP BWのバージョンをご存じないお客様が意外と多く、SAP BWのバージョンが7.5以上になっていないケースがよく見受けられます。
是非ここでSAP BWのバージョンをご確認ください。
SAP BWバージョンの確認方法を以下に解説します。
<SAP BW バージョン確認方法>
1.SAP GUIにログイン
2.システム(Y)をクリック
3.ステータス(A)をクリック
4.詳細(虫眼鏡アイコン)をクリック
5.インストール済SWコンポーネントバージョンタブを開き、コンポーネント列がSAP_BWの「リリース項目」を確認
上記サンプルの場合はSAP BW のバージョンは7.55となります。
SAP BWのバージョンが7.5未満だった場合、すなわち保守期間がすでに終了している場合はどうすればよいのでしょうか?
答えは以下の二つを早急に検討するしかありません。
- SAP BW7.5へのバージョンアップ
- SAP BWの他BIシステムリプレイス
現実的には、保守を委託しているSAPベンダーに相談して1. SAP BW7.5へのバージョンアップの見積取得からスタートすることになるでしょう。
SAP BWバージョン7.5以上の場合、以下のメリットが受けられます。
- 2027年12月31日までSAP BWを利用継続可能
- いつでもSAP BW/4HANAに移行可能
SAP BW完全ガイド
~ “これまで” と “これから” のBWの全てが分かる ~
SAP S/4HANAに移行するとSAP BWは使えなくなる!?
実は、SAP S/4HANAに移行するとSAP BWは使えなくなるのです。
これも衝撃的な事実ですね!
「苦労して予算を確保しせっかくSAP BWを7.5にバージョンアップしたのに、SAP S/4HANAに移行するとSAP BWが使えなくなってしまう」
これでは困ってしまいますね。
ここでも少々驚かせてしまいましたが、詳しく解説すると以下の通りとなります。
- 既存SAP BWのETLおよびDWH機能はSAP BW/4HANAへ移行可能
- しかし、SAP BWのレポート&分析標準ツールであるBusiness Explorer(以下BEx)
はSAP BW/4HANAでは機能が無くなってしまうため移行不可能
この事実は、すなわち
- 現行の業務で利用・管理しているBExを使用したBIシステムはSAP BW/4HANA移行時に
BusinessObject(以下BO)等の将来的にも利用が可能なBIシステムで再構築する必要がある
ということなのです!
そしてこれは、SAP BWを利用しているすべての企業に該当します。
SAP BW利用企業はSAP S/4HANA移行時、新規にBIシステムも同時に検討し、導入・構築しなくてはならないのです。
ここでもう一つの衝撃の事実をお知らせします。
- SAP BW/4HANAの最新バージョンである2021は、2027年12月31日にサポート期間終了となる
こうなると、SAP BW利用企業は、2027年までECC6.0を使い続けたほうが良い気がしてきます。
SAP BWを止めてもライセンス保守コストは安くならない!?
では、いっそのこと、SAP BWの利用を止め、削減できた保守コストを原資にして、他のBIシステムを導入できるのでは?と考えたくなります。
実はここにも落とし穴があるのです。
実は、SAP BW利用を止めても、SAP BWライセンス保守の部分解約はできません。
SAP BWのライセンス保守費用はSAP ERP本体のライセンス保守費用に含まれているため、利用を止めても保守費用は削減できないのです。
しかし、SAP BW利用を止めることによって、削減できるコストがあることも事実です。
SAP BWを運用する中で、膨らみがちなコスト要因を以下に解説します。
<SAP BWの利用停止により削減可能なコスト>
◆ SAP BWを稼働させるハードウェアコスト
・SAP BWはROLAPという集計用のデータベース構造を採用しているため、
ハードウェアリソースを潤沢に用意する必要があり、コスト増の要因となり得る。
・SAP BW/4HANAはインメモリデータベースを採用しているため、
ハードウェアリソースを潤沢に用意する必要があり、コスト増の要因となり得る。
◆ SAP BWの運用・改修コスト
・ABAPというSAP専用の開発言語を用いているため、
自企業のみで運用リソース確保が難しく外部委託するケースが多い。
よってバージョンアップやシステム改修のコスト増の要因となり得る。
これらのコスト削減を実現できる方法があれば、ライセンス・保守・運用コストをトータルで考えて、SAP BWを他のBIシステムにリプレイスする実現性も出てきます。
まとめ SAP BWを取り巻く状況を理解した今、次に何を考えるべき?
「 SAP BWとは? 意外と知らないBWの基礎知識」を読んでくださった方にお勧めするSAP BW/4HANA移行検討の進め方を以下にまとめます。
1.自社のSAP BWのバージョン調査
2.a)SAP BWのバージョンが7.5未満の場合
・保守を委託しているSAPベンダーに相談してSAP BWバージョンアップの見積取得
・SAP BW維持に関わるコスト(ハードウェア、運用・改修等)を算出
b)SAP BWのバージョンが7.5以上の場合
・SAP BW維持に関わるコスト(ハードウェア、運用・改修等)を算出
この時点で、今後SAP BWを運用・改修するためのコストベースが算出されます。
次に考えなくてはならないことが以下コストです。
3.SAP BW/4HANAに移行するコストの算出
・ハードウェアリソースの追加コストを算出
・SAP BWをBW/4HANAに移行する作業コストを算出
・SAP BO等の新規BIシステム構築コストおよび“利用人数分”のライセンスコストを算出
前述のとおりSAP BWライセンスはSAP ERP本体のライセンス契約に含まれていたため、SAP BW利用人数はSAP ERPのライセンス数分獲得できていました。
しかし、SAP BO等を新規導入する場合は、改めてBIシステム利用人数を算出し、ライセンス購入数を決める必要があります。
そして最後にあげられるのが
4.SAP BWのリプレイス検討
です。
上記2.3.の過程で算出したコストを基に、他のシステム導入コストを比較しながら、適切なSAP BW移行検討が行えるのです。
*SAP BWの移行モデルについてはこちらのページをご覧ください。
ここで、ひとつ耳寄りな情報をお伝えします。
弊社が開発・販売する「SAP BIプラットフォーム BusinessSPECTRE」は、あらゆるレポーティングシステムにSAPデータを連携可能にする製品です。
BusinessSPECTREは、以下メリットをSAPユーザーに提供します。
・SAP ECC6.0およびSAP S/4HANAともに同一データベースでの接続を実現
・SAP S/4HANA移行前でも構築/参照可能であり、
SAP ECC6.0で参照した帳票類やデータ資産は、SAP S/4HANA移行後もそのまま参照可能
・Microsoft SQL Serverをベースとしたシステムのため、軽量かつ扱いやすいBIシステムを実現
・サーバーライセンス体系のため、利用人数が増えても追加ユーザーコストは発生せず
BusinessSPECTREは、SAP BWリプレイスを容易に実現し、SAP BWユーザーを次の心配から解放します。
◆ SAP BW保守期限の心配
◆ SAP S/4HANA移行時に必要なBExリプレイスの心配(要件定義工数などの負担)
◆ 利用人数分の新規BIライセンスコスト増&インメモリ化によるハードウェアコスト増の心配
なお、BusinessSPECTREの詳細を知りたい方は、弊社Webサイトをご覧ください。
ページ最下部にBusinessSPECTREの機能概要をわかりやすく解説したご紹介動画を掲載しております。
BusinessSPECTRE ご紹介ページ:https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-bi-businessspectre/
また、SAP BWに関するより詳細な情報は、以下URLの資料をダウンロードください。
◆ タイトル :SAP BW 完全ガイド
~“これまで”と“これから”のBWの全てが分かる~
概要 :SAP BWの機能概要や課題とこれからについて解説した資料です。
URL :https://inv.dentsusoken.com/lp/ebook/bw_businessspectre_2
◆ タイトル :SAP BW サポート終了問題 解決ガイド
概要 :SAP BWの特徴を正しく理解した上で、SAP BWを“何に”移行すべきか、
その選択肢と移行方針検討のポイントを解説した資料です。
URL :https://inv.dentsusoken.com/lp/ebook/bw_businessspectre2_2
SAP BWリプレイスのことでお困りの際は、ぜひ電通総研にご相談ください。
※当ブログ記事の内容は2024年4月1日時点での情報を基にしております。