SAP BW におけるコンサルの役割とは?(Vol.16)

  • 公開日:2021.03.02

SAP BWを導入、運用、移行を行う際にコンサルが重要な役割を果たします。
SAP BWは非常に豊富な機能を有しておりますが、高機能であるが故にユーザー自身がすべての機能を把握し適切な対応を行うことは困難です。
ユーザーの業務に必要な機能を実現するためにはSAP BWに詳しいコンサルに対応を依頼する必要があります。

そこで本ブログでは、コンサルの役割について振り返り、コンサルに対応を依頼する上でのポイントを解説していきます。 

SAP BW におけるコンサルの役割とは?(導入時)

SAPのBI PlatformとしてSAP BW(SAP Business Warehouse)を導入する場合、実施すべき事項は非常に多岐に渡っており、ユーザー自身で導入計画策定、設計、セットアップ、実装、テストを行うことは不可能です。
SAP BWの知見のあるコンサルにプロジェクトへ参画してもらい支援を得ることで円滑に推進することが可能になります。

SAP BWを導入する目的を定義し、経営、業務の意思決定に必要とされる情報を整理した上で、実行系であるSAP ERP、計画系であるSAP BPS、SAP APO、営業系であるSAP CRMなど、多数のシステムからデータを抽出、蓄積するためのデータウェアハウスの設計、実装、テストをコンサルと共同で実施することになります。
また、データウェアハウスにデータを蓄積するだけでは業務で直ぐに活用することはできません。
蓄積された大量データを加工、集約しデータマートを構築することで必要な情報が取り出しやすいようになります。

データマートを構築する際に重要なポイントは業務ロジックをSAP BWの数あるコンポーネントのどこに組み込むべきかを決めることにあります。
業務ロジックとは特定の業務に必要なデータの絞り込み条件や集約条件、計算式や表示形式、役職や部署ごとの権限指定などになります。

SAP BWでは抽出、蓄積、加工といった処理を行うためのコンポーネントが多数あり、各コンポーネントに対して業務ロジックを組み込むことが可能となっています。
優秀なコンサルであれば必要とされる業務ロジックを精査し、普遍的なものと流動的なものに分類、どのコンポーネントに組み込むべきかを的確に判定し、システム設計を行っていきます。
判定する基準のひとつにシステム部門、業務部門のITリテラシーがあります。
SAP BWを運用する上でのITリテラシーが不足している場合はシステム設計と合わせてトレーニング計画を立案、実施することがコンサルの重要な役割であり、コンサルの力量が試される部分となります。

ただし、SAP BWのシステム構造は大変複雑であり、導入時のトレーニングでSAP BWで提供されるコンポーネントすべてのスキルを習得することは困難であり、コンサルの役割は非常に大きいと考えられます。

SAP BW におけるコンサルの役割とは?(運用時)

SAP BWの運用時のコンサルの役割は前項で解説したシステム設計、および、トレーニングの実施内容に大きく左右されることになります。

企業を取り巻くビジネス環境は常に変化し続けているためSAP BWの導入が完了し運用が開始されると業務ロジックの仕様変更は当然発生します。
導入時のコンサルが運用開始後もサポート担当にアサインされていれば業務ロジックの仕様変更が発生しても直ぐに対応が可能ですが、SAP BWを長年運用していると導入時に担当していたコンサルが継続的にサポートしていることは非常に稀です。

SAP BWの導入時に十分なシステム設計時間が確保できていない場合や、SAP BWの導入を行うためのスキルが不足しているコンサルがシステム設計を行った場合などは、業務ロジックを組み込む箇所が適切ではなく、業務ロジックが分割され複数のコンポーネントに跨って実装されており、コンサルが影響調査を行った上で仕様変更を行う必要があります。

また、SAP BWの導入時にシステム部門、業務部門がSAP ERP本体の導入対応で十分なトレーニングを確保できていない、導入時のコンサルのトレーニング計画が不十分といった理由でSAP BWを運用するためのITリテラシーが備わっていない状況である場合、SAP BWの内部がブラックボックス化してしまっているため、業務ロジックの仕様変更が発生するたびにコンサルへ依頼し対応を行ってもらうことが必要となります。
SAP BW導入時の状況にもよりますが運用時においてもコンサルの役割は重要なものと考えられます。 

SAP BW におけるコンサルの役割とは?(移行時)

SAP BWにおける最新バージョン7.5の保守期限は2027年12月、バージョン7.0~7.4をご利用の場合は2020年12月となっており、SAP ERPの新バージョンであるSAP S/4HANAに対応したBW/4HANAへの移行(コンバージョン)、もしくは、他のSAP対応BIプラットフォームへの移行(リプレイス)が必要です。

長年の運用の中で業務ロジックの仕様変更に伴い利用されなくなったコンポーネント、機能、レポートが散在している状況になっているかと思われ、そのままでは無用なシステム資産を含んだ状態で移行することになり移行コスト、移行リスクともに増加することになります。

ただ、無用なシステム資産を洗い出そうにも、前項でも解説させて頂いた通りSAP BWの内部がブラックボックス化してしまっている可能性があり把握が困難であることが考えられます。

また、BWのレポートツールとしてBusiness Explorer(以降BEx)をお使いの方は多いかと思いますが、次バージョンではBW/4HANAではBExがサポートされていません。

そのためBW/4HANAへの移行、他のSAP対応BIシステムへの移行、いずれの場合においてもレポートツールの検討が必要となります。

SAP BWの移行時には無用なシステム資産の洗い出しと整理、新たなレポートツールの検討などが必要となりますが、ユーザー自身ですべてを実施することは難しいと思われるため、コンサルが移行プロジェクトに参画、推進することが重要な役割になります。 

まとめ

SAP BWにおけるコンサルの役割について導入時、運用時、移行時に分けて解説して参りました。

導入時のコンサルの役割として挙げている業務ロジックのシステム設計と、システム部門、業務部門のITリテラシーを考慮したトレーニング計画立案と実施について的確に対応できているかが、運用時、移行時のコンサルの役割に大きく影響しています。

今後、SAP BWの移行を検討している場合、移行後の新BIシステムの運用で問題が発生しないよう、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できるシステム設計と運用体制を描けるコンサルの採用、ならびに、システム部門、業務部門のユーザーが容易にスキル習得できるソリューションの選定を行うことが重要なポイントになります。
また、SAP BWの移行計画立案に際してはSAP ECCからS/4HANAへの移行スケジュールを加味した上で、新BIシステムにおけるトレーニングに十分な時間が確保できるよう検討することも重要なポイントになります。

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