SAPの財務会計(FI)モジュールは何ができるの? ~機能・役割・サブモジュールを解説~(vol.108)

  • 公開日:2024.02.05

ドイツに本社を置くSAP社は世界中の企業に向けて、業務プロセスを統合し、業績を向上させるために使用する包括的なERPシステムを提供しています。その中でも、SAP ERPの財務会計機能は、企業の財務プロセスを効率化し、透明性を向上させるための重要なツールとなっています。
そこで本ブログ記事では、財務管理の重要性に触れながら、SAP財務会計(FI)モジュールの機能概要・特徴・主要サブモジュール・メリットに焦点を当てて、解説します。

*SAP製のERPシステムは、業務領域ごとの機能群=「モジュール」で構成されます。
 モジュールについて、詳しくは「SAP入門 ~モジュール・用語などをわかりやすく解説~(vol.101)」をご覧ください。

会計システムの目的・メリットとは?

会計システムとは、財務データを管理し、経済的な取引を記録・分析するための情報システムです。これは、企業の財務健全性を確保し、意思決定をサポートするために使用されます。加えて、企業の財務状態を要約し、株主、税務当局、投資家などに対して提出される決算報告書を生成することが出来ます。

会計システムが主な利用シーンは次の通りです。

  1. 仕訳帳と帳簿の管理
    取引の発生とそれに伴う会計処理を仕訳として記録し、それを元に帳簿を管理します。
  2. 財務諸表の作成
    収益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を生成します。
  3. 予算の策定と管理
    企業は予算を策定し、会計システムを使用して実績との比較を行い、予算達成度を監視します。
  4. 税務申告
    税務申告のために必要な情報を提供し、税務コンプライアンスを確保します。
  5. 経営分析
    会計データは経営陣が意思決定を行う際の重要な情報源であり、会計システムはこれらのデータを分析し、経営陣に戦略的な洞察を提供します。

このように、会計システムは企業の財務を効果的に管理し、法的要件を遵守するとともに、意思決定プロセスをサポートする重要なツールとなっています。

SAP 財務会計(FI)モジュールの役割

会計システムは様々存在しますが、SAP社はその中でも、中小企業~大企業~多国籍企業まで、幅広い規模の企業にサービスを提供しています。本章では、SAP ERPが企業の財務管理においてどのような役割を果たしているのか、解説します。

  • 会計データの集中管理
    SAPでは企業全体の会計データを一元管理し、複数の部門や拠点からのデータを統合します。これにより、リアルタイムで経営者が会社全体の財務状況を把握でき、戦略的な意思決定をサポートします。
  • 財務報告の効率向上
    SAPの財務会計(FI)モジュールは、財務報告プロセスを効率化し、正確な財務報告書を生成します。企業は法的要件や規制に適合し、株主や関係者に対して透明性のある報告を提供することができます。
  • 内部統制の確立
    会計プロセスにおいて内部統制は重要です。SAPは内部統制機能を組み込んでおり、不正やエラーを未然に防ぎ、企業の信頼性を高めます。

SAP 財務会計(FI)モジュールの主要サブモジュール

SAP ERPの財務会計(FI)モジュールは、企業の経理プロセスを効果的に統合し、リアルタイムで正確な財務情報を提供します。この特性により、企業は意思決定を迅速かつ的確に行い、競争力を維持・向上させることが可能となります。

SAP ERPの財務会計(FI)モジュールを構成するサブモジュールのうち、一般的に使われるものは次の通りです。

  • 総勘定元帳(FI-GL)
    SAP FI-GLは、企業の財務データを統合し、主勘定帳や補助帳を管理します。仕訳帳やバランスシートの作成、勘定科目の管理など、企業の基本的な会計プロセスをサポートします。
  • 債権管理(FI-AR)
    SAP FI-ARは、顧客との取引に関する情報を効果的に管理し、請求書の作成や支払いの追跡などを行います。これにより、企業は売掛金を効率的に回収できます。
  • 債務管理(FI-AP)
    SAP FI-APは、仕入れ先との取引に関する情報を管理し、請求書の処理や支払いの計画を効率的に行います。これにより、企業は供給チェーンをスムーズに運営することができます。
  • 固定資産管理(FI-AA)
    SAP FI-AAは、企業の資産を効果的に管理し、減価償却や資産の価値の変動などを追跡します。これにより、企業は資産の最適な利用を実現し、経済的な効果を追求できます。

SAP 財務会計(FI)モジュールを使うメリット

企業の経営環境がますます複雑化する中で、効率的で信頼性の高い財務管理がビジネスの成否に直結しています。その中で、SAP ERPは、会計システムとして世界中の企業において広く利用され、次のようなメリットをもたらしています。

  • 統合性
    SAPの会計システムは、他のSAPモジュールとのシームレスな統合を提供します。これにより、財務情報と他のビジネスプロセスとの一元化されたデータベースが可能となります。
  • 柔軟性
    カスタマイズ可能な設定や柔軟な帳票フォーマットを利用して、企業の独自の要件や業界規範に合わせた運用が可能です。
  • リアルタイム分析
    リアルタイムでの財務データの更新とアクセスが可能であり、迅速な意思決定を支援します。ダッシュボードやレポートを通じて情報をビジュアル化し、トレンドやパフォーマンスを把握できます。
  • セキュリティ
    データセキュリティが重要な要素となる中、SAPは堅牢なアクセス制御とデータ保護を提供し、機密情報を守ります。

まとめ

SAP ERPが持ち合わせる会計機能は、企業の財務プロセスを革新し、ビジネスの成功に不可欠なツールとなっています。統合性/柔軟性/効率向上/透明性などの特徴により、企業は迅速かつ正確な財務情報を得ることができ、これが経営戦略の策定と実行において大きな利点となっています。SAP ERPの会計機能を利用した財務管理は、変化するビジネス環境に対応し、持続的な成長をサポートするための効果的な手法として企業に価値を提供しています。

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*本記事は、2024年1月1日時点の情報を基に作成しています。
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