SAP SuccessFactorsへHR(人事管理)モジュールを移行する方法とは?(vol.60)

  • 公開日:2022.01.24

SAP S/4HANA移行に伴い、SAP HR(人事管理)モジュールをSAP SuccessFactors(エスエーピー サクセスファクターズ:以下、SuccessFactorsという)へ移行検討されているユーザーも多いと思います。
SuccessFactorsは、タレントマネジメントから人事/給与まで、すべての人事業務をクラウドで実現できるソリューションです。
なお、SAP HRモジュールは日本国内SAPユーザーの約12%※①が利用中と考えられます。また、頻度の多い法制度対応の為、SAP ERPとは異なるサーバー上に構築され、独自にメンテナンスされているケースが多いです。その上、SAP HRを構築・保守できるベンダーは限定的なので、SuccessFactorsへの移行情報はあまりオープンになっていません。

そこで、本ブログでは、弊社が携わったSuccessFactors移行案件で得た事実/ノウハウを中心に、「SuccessFactors移行成功のポイント」を解説していきます。

※①以下、電通総研独自のユーザー調査結果より推察
 SAPユーザの”いま”と”これから”~意識調査結果~ | 電通総研

SAP SuccessFactorsへHR(人事管理)モジュールを移行するための条件とは?

まずは、弊社が携わったSuccessFactors移行案件で知り得た情報を以下に記します。

知り得た情報

SAP ECC6.0/SAP HR上の(給与計算関連のABAPで構築した)アドオンプログラムは以下条件を満たせば、
SuccessFactors Employee Central Payroll※②(以下、SF-ECPという)へ移行可能

※②SuccessFactors Employee Central Payrollとは、SuccessFactorsの主要機能の一つで、日本固有の法制度や業務プロセスに広く対応した給与計算業務を総合的に支援するサービスのこと

前提条件

SAP ECC6.0/SAP HRのバージョンがEHP7以上/Unicode(ユニコード)化対応済であること

当初、SAP HRモジュールのアドオンプログラムがSuccessFactors上で稼働できると聞いて大変驚きました。
SuccessFactorsをここまでSAP HRと融合させているとは、さすがSAPですね!

SAP SuccessFactors移行のポイントと前提条件確認方法

ここで皆さんはこう思うでしょう。

  • EHP7以上って何?
  • Unicode(ユニコード)化対応って何をすればいいの?

そこで、まずはEHPについて解説します。
EHPとは、SAP enhancement package for SAP ERP(エスエーピー エンハンスメント パッケージ)の略称であり、SAP ECC6.0導入済みのユーザーに継続的に提供される機能拡張パッケージです。
よってEHP7以上とは、EHPのバージョンが7以上となります。
では、自社SAP HRのEHPのバージョンの調べ方はどうすればいいのか?
それは、以下URLに詳しく記載されていますので、実際に調べてみてください。

EHPのことがわかると、次に出てくる懸念は、そもそも自社SAPシステムはUnicode化されているかどうかですね。
Unicode化されていれば、今後はEHP適用だけ考えればよく、少し気が楽になります。
ではUnicode化していない場合、どんなことに気を付ければよいのでしょうか?

最初に確認すべきポイントは以下となります。

  • 現在のSAP HR環境が、シングルコードページ設定か、他のコードページ設定か?

シングルコードページとは、日本語・ドイツ語・英語がセットでインストールされた環境のことで、デフォルト設定です。SAP ECC6.0を日本国内だけで利用しているお客さまは殆どがこの設定です。
海外拠点へSAP ECC6.0を展開している場合は、以下2パターンのコードページ設定となります。

  1. MDMP(マルチディスプレイ/マルチプロセッシング)
  2. SAPブレンドコードページ

1.MDMPの設定は、アプリケーション・サーバー(以下、APサーバーという)で動的コードのページ切り替えを行っているので、APサーバーが言語ごとに構築されているなど、システム構成を見ればわかる場合もあります。しかし2.SAPブレンドコードページの設定は、ユーザー自体が認識していない場合も多く、設定確認が必要となります。

この設定内容により、ベーシス作業ボリュームが変動します。また、アプリ確認もその言語でログイン確認しないと文字化けが判らないので、言語毎のチェックが必要となりスケジュール&工数アップになります。1.MDMP設定がされているケースはそれほど多くないですが、経験的にR/3 4.x からアップグレードしている顧客は要チェックです。

ではここで、自社SAPのUnicode化の有無、およびコードページ設定内容の確認方法を以下にご紹介します。気づいたときに調べてしまいましょう!

ユニコード(Unicode)化有無、およびコードページ設定内容の確認方法

  1. SAP GUIにログイン
  2. トランザクションコード:SE38を入力し、プログラム”RSCPINST”を実行
  3. NLS設定更新画面にて”現在のNLS設定”をクリック
  4. ”現在のNLS設定”画面にて、現在のシステムが利用しているコードページ情報を確認

コードページ設定の内容確認は、以下Noteに添付されている「R3languages.pdf」という資料を参照ください。
※資料ダウンロードにはSAP ONE Support LaunchpadのIDとパスワードが必要となります。
 https://service.sap.com/sap/support/notes/73606

ちなみに、SAP製品とUnicode方針について、以下のSAPブログに記載されていて、ここから詳細情報が入手できます。
 https://blogs.sap.com/2014/07/12/sap%E8%A3%BD%E5%93%81%E3%81%AEunicode%E6%96%B9%E9%87%9D-faq/

SAP SuccessFactorsへの移行事例

それでは、弊社が実際に携わったSuccessFactors移行案件の具体的な内容をご紹介します。

移行案件概要

  • SAP HR(SAP ECC6.0-EHP未適用/Unicode化未対応)からSF-ECPへの移行
  • 移行作業はSAP HR導入ベンダーが実施

手順

  1. 稼働中のSAP ECC6.0/SAP HR自体はバージョンアップせずに、本番環境をコピーして中間機を構築
  2. その中間機をEHP7へバージョンアップし、Unicode化対応を実施
  3. 中間機上のSAP ECC6.0/SAP HR(EHP7およびユニコード化対応済)のアドオンプログラムを、SAP移送プログラムでSF-ECPへ移送実施

手順としては至ってシンプルですが、この情報はGoogle検索しても意外と出てきません。手順どころか、SAP ECC6.0/SAP HR上のアドオンプログラムは条件を満たせばSF-ECPへ移行可能という情報すら出てきません。(本ブログにより、SAP HRユーザーの現実的な選択肢が一つ増えていれば幸いです)

さて、そうなると次は、

  • この移行方法がどのくらいのボリューム(作業期間・コスト・リスク)になるのか?
  • 移行を成功させる秘訣は何か?

を知りたくなるのがユーザーの本音だと思います。

SAP SuccessFactors移行を短期間・低コスト・低リスクで成功させるために

今回の移行作業は手戻りなく予算内で無事終了し、SuccessFactorsは現在も不具合など発生せず、安定稼働しています。
移行作業成功の要因はいくつかありますが、本ブログでは移行時の作業で大きな割合を占める“EHP7へのバージョンアップ”について、成功するための方法を解説します。

そもそも、お客さま本来の目的は、既存SAP ECC6.0からSAP S/4HANAへ移行することであり、SAP HRをSF-ECPへ移行することは、その前哨戦に過ぎません。更に言うなら、EHP7へのバージョンアップは、その前哨戦のための通過点に過ぎず、バージョンアップに関する作業期間・コスト・リソースはできるだけ最小化する必要がありました。

EHPをバージョンアップする際に、短期間・低コスト・低リスクで実施するためには、次の事柄がポイントとなります。

  • EHPバージョンアップに伴う影響範囲をプロジェクト開始前に正確に把握すること

→具体的には以下の2つがポイントです

  1. アドオンプログラム修正箇所の特定
  2. 確認テスト範囲の特定

今回のプロジェクトでは、以下の弊社提供サービスをご利用いただくことで、EHPバージョンアップに伴う影響範囲をプロジェクト開始前に正確に把握することに成功しました。

当サービスをご利用いただいた結果、手戻りが発生せず、予算内/予定スケジュール内でプロジェクトを成功に収めることができました。

まとめ

今回我々が得た事実・ノウハウは以下の通りです。

  • SF-ECP上でもSAP ECC6.0/SAP HR上の(給与計算関連のABAPで構築した)アドオンプログラムは稼働可能である

※ 前提条件:SAP ECC6.0/SAP HRがEHP7以上&Unicode化対応済であること

SAP HRモジュールのSuccessFactors移行事例/情報はまだまだ十分ではありません。
我々は日々の活動の中から得られた事実・ノウハウを今後もブログ上で発信したいと考えております。

また、弊社Webサイトでは、SAP S/4HANA移行のご判断を迷われている方に向けて、学びの資料をご提供しております。
資料ダウンロードページに公開しております以下の資料は、皆さまのSAP 移行のための意思決定を支援してくれるはずです。是非、ご覧ください。

「SAP S/4HANAって、正直何ができるの?」
 https://inv.dentsusoken.com/lp/ebook/sap-s4hana_2

「SAP移行って、正直、どうすればいいの?」
 https://inv.dentsusoken.com/lp/ebook/sap-s4hana_conversion_2

「SAP S/4HANA移行トータル支援サービス基本ガイドブック」
 https://inv.dentsusoken.com/erp/guidebook/sap-s4hana_conversion_2

本記事は2022年1月20日の情報を基に作成しています。製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、各製品・サービスベンダーのサイトからお問い合わせください。
 https://erp.dentsusoken.com/inquiry/