SAP BIを定着化させるトレーニングの勘所【後編】(vol.53)

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SAP ERPをデータソースとして構築したBIを経営や業務に役立てていくには、SAP BIツール導入時のトレーニングが不可欠です。エンドユーザーが主体的にBIツールを活用し、業務に役立てていくためのトレーニングの勘所をユーザー企業の導入事例に沿って解説します。
後編では、トレーニングの実施内容とその後の対応について解説します。
前編では、トレーニングの事前準備について解説しています。

SAP BIのトレーニングを行ったユーザー企業のケース

SAP ERPユーザー企業A社では、SAP ERPの導入に合わせ、BIツールも導入しました。BIツールで分析を行う対象は主に会計データであり、全国各拠点および各関係会社の経理担当者が自由分析*を行います。BIツールを利用するエンドユーザー数は約200ユーザーです。

*自由分析:固定フォーマットのレポートを参照するのではなく、各エンドユーザーが個別で必要な形にレポートを作成/加工し分析を行う形態

前回の事前準備の中で、A社は以下の事前準備を行いました。
 ・推進体制として、レポート担当とシステム担当の役割を設定
 ・トレーニング環境は、本番環境を利用
 ・トレーニングデータは、総合テスト時のデータを利用
 ・データモデルを作成
 ・ユーザーIDを作成
 ・データモデルに対して適切な権限をユーザーIDへ設定

こういった事前準備が済んでいることを前提として、本ブログでは、実際のエンドユーザー向けBIトレーニングの実施内容やトレーニング後のフォロー対応のポイントについて解説します。
なお、システム担当者向けのトレーニングは、主にツールの利用方法の説明であり、受講する担当者も限られるため、今回は割愛します。また、BIツールそれぞれで使い方は異なるため、今回は汎用的なポイントのみ解説します。

SAP BIのトレーニング実施内容(トレーニング形態)

A社は利用拠点が全国にわたるため、キャラバン形式の集合形態によるオンサイト・トレーニングを実施しました。しかし、テレワークが主流の今、全国移動や集合形態を伴うオンサイト・トレーニングは避けられる傾向にあります。

昨今では、Teams等のWeb会議ツールを用いたオンライン・トレーニングを行うケースが増えているかと思います。オンライン・トレーニングには、オンサイト・トレーニングであればできていた「Face to Faceでの質疑応答」が難しくなるというデメリットはありますが、「トレーニング内容を録画して後で見返してもらう」といった対応ができるメリットがあります。

SAP BIのトレーニング実施内容(トレーニング内容)

実際のトレーニングは、各エンドユーザーのユーザーIDでログインをしてもらい、実態に近いレポート作成を通じてツールの使い方に慣れてもらう、というのが最も王道的なやり方です。

利用するBIツールにもよりますが、レポート作成は、大きく分けて2つの形式があります。
 ①Excelピボットテーブルのような形でクロス集計を行いレポート作成する
 ②テーブル上に存在するデータをそのままリスト出力してレポート作成する
各形式でレポート作成の方法が異なるため、それぞれのパターンでトレーニングが必要となります。2つの形式に合致した、業務上利用頻度の高そうなレポートをサンプルとして用意し、同様のレポートを作成してもらう形でトレーニングを進められると良いでしょう。

また、業務上作成したいレポートに対して、どのデータソース/データモデルを用いれば良いのか、といった業務的な観点の問い合わせが出てくることが考えられます。前編で触れたように、推進体制を整えて迅速な質疑応答ができるようにしておくほか、トレーニング資料としてあらかじめよくある質問をFAQとしてまとめておくとエンドユーザーのリファレンスとしても有用です。

加えて、作成したレポートは画面上で確認/分析をするものなのか、それともExcel出力して2次加工を行う前提なのか、といった業務上の利用シーンをおさえておくとよいでしょう。これにより、エンドユーザーがどういった意図で質問しているのか、どのような用途で使用する前提なのかといった背景が明確となり、トレーニング時の質疑応答やトレーニング後のフォローもスムーズになります。

SAP BIのトレーニング実施後のフォロー

トレーニング実施後は、各エンドユーザーの習熟度が上がっているか定量的な把握を行いたいところです。A社では、既存システムでエンドユーザーが作成/利用していたレポートを、BIツール上で作成する必要があったため、対象のレポートを何本作成できているか、その本数を把握することで習熟度合いを図る参考としていました。

また、エンドユーザー主体でレポート作成を進めていくにあたり、前回述べたレポート担当メンバーを中心とした問い合わせ窓口を用意したことで、レポート作成にあたっての不明点などをスムーズに解消することができました。

問い合わせ内容については、その発生件数やどのような種類の問い合わせが発生しているかを週次などの単位で集計しておくことが望ましいです。これらの集計値を見ることで、当初は基本的な問い合わせが多かったものの、数週間のうちに質問の内容がより高度化していったことがわかるなど、エンドユーザーの習熟度の把握につながります。

加えてA社では、問い合わせを待つだけではなく、月次などの単位で全国各拠点の関係者とミーティングを行い、レポート作成にあたっての有益な情報を横展開したり、エンドユーザーが抱えている問題点などを共有したりする場を設けることで、全社レベルでの習熟度向上に努めてきました。

SAP BIトレーニングの評価と今後の改善点

A社は、事前準備やトレーニング実施時および実施後の適切なフォローもあり、カットオーバー後のエンドユーザーの業務運用はスムーズに滑り出すことができました。

一方、今後の課題としては、各担当者の負荷を抑えることが挙げられます。これは、ステークホルダーの多さから、各担当者の対応/調整の負荷が高くなるケースが多いためです。

本ブログの内容は、実際のお客様の事例に基づいて整理したものです。このお客様のBIツールは、弊社電通総研が提供しているBusinessSPECTREを用いた事例です。
BusinessSPECTRE:https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-bi-businessspectre/

BIツール導入の主体はお客様ご自身となりますが、豊富な経験により蓄積したノウハウを活用し、BIツールの導入/運用定着化に向けた様々なアドバイスやご支援をできることが電通総研の強みです。もし、BIツールの導入をご検討の場合は、是非、お声掛けください。

SAP BIを定着化させるトレーニングの勘所【前編】(vol.52)