SAP Cloud ERP Privateを解説 RISE with SAPはどう変わったのか(vol.125)

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SAP S/4HANA Cloud Public Editionを中核としたクラウドERPサービスは「RISE with SAP」として広く知られていましたが、2025年春にこのサービス呼称が「SAP Cloud ERP Private」へ変更されたことはご存じでしょうか。

企業のDX推進やIT人材不足が課題になるなか、インフラ管理負荷の軽減や運用効率化を目的として、オンプレミス型のSAP ERPをクラウドERPへ移行する企業が増えています。SAP社が提供するクラウドERPのなかでも、SAP S/4HANA Cloud Public Editionを中核とする「SAP Cloud ERP Private」は、既存の業務やアドオンを活かしながらクラウドERPへの移行を進められる点が特徴であり、SAPユーザー企業にとって有力な選択肢となっています。
これまで、このサービスは「RISE with SAP」という呼称で提供されていましたが、現在では「SAP Business Suite Packages」というサービスパッケージの中に位置づけられ、「SAP Cloud ERP Private」という呼称に変更されています。

本ブログ記事では、「SAP Cloud ERP Private」とはどのようなサービスなのかを整理するとともに、「RISE with SAP」が現在示す意味合いについても分かりやすく解説します。

SAP Business Suite Packagesとは

SAP Cloud ERP Privateについて解説する前に、SAP社が提供するクラウド型ERPサービスパッケージ「SAP Business Suite Packages」の全体像を解説します。

SAP Business Suite Packagesとは、SAPが提供する クラウドERPサービスパッケージの総称です。
SAP Business Suite Packagesには、「SAP Cloud ERP Private(Private Edition)」と「SAP Cloud ERP(Public Edition)」の2つのクラウドERPサービスが存在します。それぞれの違いは以下の通りです。

○SAP Business Suite Packages
– SAP Cloud ERP Private(Private Edition)
 ・SAP S/4HANA Cloud Private Editionを中核としたクラウドERPサービス
 ・柔軟なアドオン開発や個別拡張が可能

– SAP Cloud ERPPublic Edition
 ・SAP S/4HANA Cloud Public Editionを中核としたクラウドERPサービス
 ・個別の開発をせず標準機能中心に業務を構築
   
SAP S/4HANA Cloud Public Editionの詳細はこちらのページをご確認ください

2025年春のサービス呼称変更に伴い、これまで「RISE with SAP」「GROW with SAP」と呼ばれていたサービスは、「SAP Cloud ERP Private」「SAP Cloud ERPPublic Edition)」へ整理されました

SAP Cloud ERP Privateとは

「SAP Cloud ERP Private」とは、SAP S/4HANA Cloud Private Editionを中核に構成されたクラウドERPサービスの呼称です。「SAP S/4HANAをクラウド(Private環境)で運用するための包括的なクラウドERPサービス」です。

「SAP Cloud ERP Private」へSAP ECC6.0から移行する場合、過年度データや既存アドオンを引き継いだ移行(コンバージョン)が可能であることに加え、個別要件に応じたアドオン開発にも対応できる点が特徴です。
そのためクラウドERPを利用したいが、標準機能だけでは自社の業務を十分に網羅できない企業やSAP S/4HANAへ移行後もこれまでのアドオン資産を活かしたい既存のSAP ERPユーザー、業務が複雑な中堅から大企業に適したクラウドERPサービスといえます。

SAP Cloud ERP(Public Edition)とは

「SAP Cloud ERP(Public Edition)」は、SAP S/4HANA Cloud Public Editionを中核に構成されたクラウドERPサービスの呼称です。個別要件に合わせたアドオン開発を行わず標準機能の利用を前提としているのが特徴です。

「Fit to Standard」実現を重視する企業や、SAP ERPを新規導入する中堅から中小企業にとって導入しやすいクラウドERPサービスです。
また、従来は単一のクラウドERPライセンスとして提供されていた機能を、「財務会計(SAP Finance)」や「サプライチェーン(SAP Supply Chain)」など業務領域ごとに最適化して提供しているため、導入範囲や業務要件に応じてより柔軟なライセンス選定が可能です。

「SAP Cloud ERP Private」と「SAP Cloud ERP(Public Edition)」の主な違いは以下図をご確認ください。

RISE with SAPとの違い

「RISE with SAP」は、2025年春までは SAP S/4HANA Cloud Private Edition を中心としたクラウドサービスの呼称として利用されていました。
しかし、2025年春以降は「RISE with SAP」が示す意味合いが大きく変わっています。現在では、オンプレミスの SAP ERP を利用する企業が、包括的なビジネスアプリケーション群「SAP Business Suite」へ移行し、イノベーションを実現していく取り組み全体を指す言葉として用いられています。この「SAP Business Suite」の基盤となるのが、「SAP Cloud ERP Private」 と「SAP Cloud ERP(Public Edition)」です。
一方で、「SAP Cloud ERP Private」は、SAP S/4HANA Cloud Private Edition を中心とし、関連する SAP ソリューションを包括的に提供するクラウドサービスの呼称です。これまで「RISE with SAP」というパッケージで提供されていた内容は、この「SAP Cloud ERP Private」に整理されました。

そのためこのブログ記事を執筆している20261月時点では、

  • オンプレミスの SAP ERP から 「SAP Cloud ERP Private」/「SAP Cloud ERP Public Edition」 へ移行し、イノベーションを進める取り組み全体を指す場合は 「RISE with SAP」
  •  SAP S/4HANA Cloud Private Edition を含むクラウドサービスの呼称として使う場合は 「SAP Cloud ERP Private」

といったように用語が使い分けられています。

SAP Cloud ERP Private導入のメリット

「SAP Cloud ERP Private」を採用する場合どのようなメリットがあるのでしょうか。

①  インフラ・Basis運用やバージョンアップ対応の負荷軽減

 「SAP Cloud ERP Private」では、インフラ・Basis領域のほとんどの作業をSAP社に依頼することが可能になっており、その範囲にはバージョンアップ作業も含まれます。ユーザーは、インフラ・Basis運用やバージョンアップの対応をSAP社に任せ、より先進的な業務改革/システム改善のための投資に集中することができます。これは、深刻化するIT人材不足への効果的な解決策ともなり得ます。

② 柔軟なライセンス体系によるライセンスコストの最適化

オンプレミス版のライセンスはいわゆる「買い切り」であり、未使用のユーザライセンスにも保守費が発生していました。「SAP Cloud ERP Private」のライセンスはFUE(FULL Usage Equivalent)というSAP社独自のカウント方式が採用されています。契約期間中はFUE数量の範囲内でライセンス割り当ての変更が可能であり、契約更新時に数量の見直しができます。結果として、組織やシステム運用体制の変更などに合わせてライセンスコストの最適化を実現可能です。

③ 高いセキュリティ

最新セキュリティパッチの適用・トラフィック監視・定期的なセキュリティテストの実施など、SAP社のセキュリティ監視センターによる24時間365日の高品質かつ広範囲なセキュリティ対策により、安心・安全に利用できます。

まとめ

本記事では、「SAP Cloud ERP Private」とはどのようなサービスなのか、また「RISE with SAP」が示す位置づけがどのように再定義され変化したかについて分かりやすくまとめてきました。
サービスの呼称に変更はあったものの、従来のSAP ERPシステムの資産を活かしながらクラウドERPへの移行を進め、AIをはじめとする最新の機能を活用しながらイノベーションを実現していくという基本的な考えに変化はありません。
既存のSAP ECC6.0から過年度データや既存アドオンを引き継いだうえで、SAP Cloud ERPへ移行したい場合、2026年1月時点では「SAP Cloud ERP Private」が実質的に唯一の選択肢になっています。

弊社では、既存のSAP ECC6.0環境から、「RISE with SAP」および「SAP Cloud ERP Private」への移行を支援してきた豊富な実績を有しています。
電通総研における「RISE with SAP」(現:「SAP Cloud ERP Private」)移行プロジェクトの事例については、以下より詳細をご確認ください。
▼株式会社光電製作所 RISE with SAP 移行プロジェクト事例
 ~20年来の基幹システムをRISE with SAPに移行 DX推進の基盤整備とシステム運用の効率化へ~
 https://inv2.dentsusoken.com/SAP/case01

「自社の環境はSAP Cloud ERP Privateへ移行できるのか?」、「移行費用はどのくらいかかるのか」、また「SAP Cloud ERP Privateのバージョンアップにおいてより効率的な方法が知りたい」といったお悩みの場合は、是非電通総研までお問い合わせください。
https://erp.dentsusoken.com/inquiry/

弊社では毎年SAPユーザーへの意識調査を実施しており、SAP Cloud ERP Privateを含むSAP S/4HANA移行に向けた準備状況や、移行・導入後の課題、今後の動向などSAPユーザーの現状を詳細にまとめています。調査資料は以下URLからダウンロードいただけます。
SAPユーザの”いま”と”これから” (2025)

※本記事は、2026年1月時点の情報をもとに作成しています。
  SAP社が公開している情報をもとに、電通総研が内容を整理、執筆をしています。