SAPデータ連携で経営分析を加速する!クラウドDWHとAI活用の最前線(vol.123)
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企業の意思決定は、従来の「経験と勘」から「データドリブン経営」へと急速にシフトしています。
その中で、SAPシステムに蓄積された膨大な業務データをどう活用するか、またクラウドネイティブなデータレイクや生成AIなど日進月歩していく技術革新のメリットを享受しながらどのように取り組みを進めていくかは、多くの企業にとって喫緊の課題です。

しかし、実際の現場では次のような点が、SAPデータ活用の大きなボトルネックとなっています。
- SAP特有のデータ構造の複雑さ
- ライセンス要件
- 差分同期の難しさ
- 分析向け加工の工数
本記事では、SAP 連携の課題・クラウドDWHのメリット・AIがもたらす未来像を解説します。経営データ分析を加速させたい企業にとって、必見の内容です。
目次
SAPユーザーの今後の取り組みテーマとデータ分析基盤
SAPユーザーの今後の取り組みテーマとは?
弊社が実施しているSAPユーザー意識調査では、毎年の調査で「経営データ分析の効率化・高度化」がSAPユーザーの今後の取り組みテーマとして上位に挙げられています。

SAPユーザーが考える今後のデータ分析基盤
Snowflake、Databricks、Microsoft Fabric などのクラウド DWH の台頭によって、企業はより柔軟でスケーラブルなデータ活用が可能になりました。
2024年度の弊社SAPユーザー意識調査によると、SAP S/4HANAユーザー企業のうち44.7%がSAP以外のクラウドDWHの利用を希望するとの結果が出ています。
つまり、多くの企業がSAP以外の外部クラウドDWHを前提とした分析基盤を検討していることが分かります。

クラウドDWHはオンプレミスDWHと比べて、次のようなメリットが挙げられます。
- スケーラビリティ:急増するデータ量に柔軟対応可能
- コスト効率:初期投資を抑え、従量課金で最適化
- 運用管理:クラウドプロバイダーが管理などを行うため、ユーザーの運用管理は簡素化
- パフォーマンス:クラウド分散アーキテクチャで高パフォーマンスな分析が可能
- セキュリティ:クラウドプロバイダーが最新のセキュリティパッチを適用

SAPデータをクラウドDWHに連携するメリットとは?
本章では、SAPデータをクラウドDWHに連携するメリットを5つに整理して解説します。
1. クロスファンクショナルな分析
異なるモジュールに格納されているデータを統合し、クロスファンクショナルな分析を可能にします。
例えば、販売データと財務データを組み合わせて、販売活動が収益に与える影響を分析することができます。
2. 顧客インサイトの向上
他のデータソース(例:CRMデータ / カスタマーサポートデータ / ウェブトラフィックデータ)と統合することで顧客行動や顧客満足度に関する深い洞察が得られます。
これにより、ターゲットマーケティング / パーソナライズドオファーの提供 / 顧客維持 / 戦略の最適化 などが可能になります。
3. 時系列分析とトレンド予測
長期間に渡って蓄積されたSAPデータを時系列分析することで、過去のデータからトレンドのサイクル/傾向などを把握することができます。
また、機械学習アルゴリズムを使用して、将来のトレンドや需要を予測可能です。これにより、戦略的な計画や資源配分をより効果的に行うことができます。
4. サプライチェーンの最適化
サプライチェーン全体のパフォーマンスを分析することで、在庫管理の最適化 / 需要予測の精度向上 / 供給業者のパフォーマンス評価などが可能になります。
これにより、コスト削減と効率化が実現します。
5. リスク管理とコンプライアンスの向上
企業のリスク管理やコンプライアンスの向上も期待できます。
例えば、財務データや取引データを分析して不正行為の早期検出を行う、法規制に基づくデータ分析を行いコンプライアンスを確保する などの取り組みが可能です。
SAPデータの連携・活用が難しい理由
- 特殊形式で格納されるSAP ERPデータ:単純にエクスポートしただけでは使用できない
- SAP独自の開発言語ABAP:単純なデータエクスポートにも工数がかかる
- 複雑なデータ構造:データ加工しないと分析業務で使えない
- 困難な差分データの抽出:日付情報が取得できないデータが存在する
- データ抽出方法に制約あり:SAP製品以外のODPフレームワーク連携は認められていない(※1)
※1 SAP ODP データ複製 APIの使用が許可されない理由についてはこちらのブログで紹介しておりますので、併せてご覧ください
AIによる未来のデータ分析~SAPデータ×クラウドDWH×AIの連携による新たな可能性~
専門的なスキルを持たない非エンジニアでも自分の欲しいデータや分析結果が自由に得られる世界となっていくことが理想で、今後、AIはこの実現に向けて中心的な役割を担うと考えられます。
非エンジニアでもデータ分析が可能に!
AI の台頭により、これまで専門スキルが必要だった分析が劇的に変わりつつあります。
自然言語で「この商品の粗利推移を月別に出して」と入力するだけで、SQLが自動生成され、分析結果が返ってくる世界が現実になりつつあります。
非エンジニアでも自然言語で直感的にデータ分析ができるようになることが、AIがもたらす最も大きな変化のひとつです。

SAPデータ×クラウドDWH×AIの連携による新たな可能性
SAPデータがクラウドDWHに連携されることで、SAPデータの価値をAIが最大限に引き出すと言えます。
弊社では、SAPデータ、クラウドDWH、AIを組み合わせたデータ分析基盤は下図のような姿になると考えています。

この図は、従来のBIツールでの分析に加えて、自然言語によるデータ探索と非定型分析の枠組みを追加したものです。
データソースからSAPデータ連携、データ蓄積、データ加工を経て、分析用のGoldデータが作られます。
そこにセマンティックモデル管理とLLMを用いたTextToSQL機能を組み合わせることで、自然言語による非定型分析が可能になります。
もちろん、従来のTableauやPower BIといったBIツールでのダッシュボードやレポートも並行して活用できます。
このように、従来の定型分析と、自然言語ベースの非定型分析の両方を、統合的に扱える分析基盤の実現が重要であると考えています。
まとめ
ここまで、SAPユーザーのリアルな課題、クラウドDWH による最新アプローチ、AIが切り開く未来型分析の姿を見てきました。
- SAPユーザーの多くが「データ活用の高度化」を最重要課題としている
- SAP データには構造・ライセンス・差分管理という特有の障壁がある
- クラウド DWH の普及で“統合分析を前提とした時代”が到来している
- AI により“非エンジニアでも分析できる未来”が現実的になりつつある
SAPデータをクラウドDWHに連携することは、企業のデータドリブン経営を支える基盤となります。
電通総研では、SAPのデータをクラウドDWHへ連携するBusinessSPECTRE XCを提供しています。
BusinessSPECTRE XCは、SAPデータをクラウドDWHへ安全かつ効率的に連携するソリューションです。
1.ライセンス制約のないデータ連携ロジック
2.ノンプログラミングでSAPデータ抽出
3.特殊データの自動変換
4.差分データ転送による最新性確保
5.主要テーブルを分析に適した形で提供
これにより、SAPデータ連携のハードルを大幅に低減し、クラウドDWH上での高度な分析の実現に大きく寄与いたします。
BusinessSPECTRE XCの詳細については弊社のホームページで詳しくご紹介しております。
https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-bi-businessspectre_xc/
ご検討時はもちろん、導入後の運用まで全面的にサポートしておりますので、ご興味がありましたらぜひご確認ください。
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