SAP ERPとは? 特徴や他製品との違い、今後の対応についてわかりやすく解説(vol.92)
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SAP ERPは世界シェア第1位のERPパッケージ製品ですが、2023年2月現在、最も普及している製品であるSAP ERP Central Component 6.0のメインストリームサポートが2027年(条件次第では2025年)で終了することが決まっています。
そこで本ブログ記事では、「そもそもSAP ERPとはどのようなものなのか?」、「メインストリームサポート終了後はどうすればいいのか?」を解説します。
SAP ERPとは?(SAP ECC との違いとは?)
SAP社が今まで提供してきたERP(Enterprise Resources Planning)パッケージ製品は、大きく分けて4つあります。
第一世代:SAP R/1、第二世代:SAP R/2、第三世代:SAP R/3、第四世代:SAP S/4HANAです。
一般的に「SAP ERP」と言えば、第三世代:SAP R/3 の内、新しいバージョンである「SAP ERP Central Component(略称:ECC)」のことを指すことが多いです。
*より詳しい情報は「SAP R/3 から S/4HANA へ ~ERPの”これまで”と”これから”~(Vol.46)」をご覧ください。
このSAP ERPは、ドイツのソフトウェア会社SAP社が2004年から提供している世界シェア第1位のERPパッケージです。SAP ERPは日本のみではなく世界中のあらゆる国で導入されており、全米総収入上位500位で構成されるFortune企業の8割以上が使用しています。
このように多くの企業で用いられているSAP ERPですが、現在メインストリームサポートの期限が2027年(条件次第では2025年)で終了することが決まっています。
SAP ERPの機能とは?
SAP R/1とSAP R/2の2つ(SAP ERPより旧世代)が大企業で用いられるメインフレームで動作するERPパッケージなのに対して、SAP ERPはWindowsやUnix等の様々なプラットフォームで動作させることが可能です。
また、SAP ERPにはモジュール(コンポーネント)と呼ばれる、業務に関わる機能をひとまとめにした単位が存在します。SAP ERPの主要なモジュールは次の通りです。
モジュール名称 | モジュール略称 |
財務会計(Financial Accounting) | FI |
管理会計(Controling) | CO |
販売管理(Sales and Distribution) | SD |
調達・在庫管理(Material Management) | MM |
生産管理(Production Planning and Control) | PP |
プラントメンテナンス(Plant Maintenance) | PM |
品質管理(Quality Management) | QM |
倉庫管理(Warehouse Management) | WM |
プロジェクトシステム(Project System) | PS |
人事管理(Human Resources) | HR |
不動産管理(Real Estate) | RE |
設備予算管理(Inventment Managemant) | IM |
クロスアプリケーション(Cross Application) | CA |
これらの様々なモジュールを自社の需要に合わせて選択し連携させることで、会社全体の業務を一括で管理することが可能になります。
*より詳しい情報は「SAPとは?~機能・特徴・製品ラインアップをわかりやすく解説~(Vol.85)」をご覧ください。
SAP ERPと他社ERPの違いとは?
SAP ERPの後継製品であるSAP S/4HANAが、他のERP製品より優れている点はどこにあるのでしょうか?
ここでは大きく、①リアルタイムでの情報の一元管理 ②業務効率化/生産性向上 ③信頼性(内部統制の強化) の観点から解説します。
- リアルタイムでの情報の一元管理
SAP S/4HANAは、複数の部門/業務にまたがる情報やグローバル拠点を含めた情報を統合し、リアルタイムで一元管理する=誰もがタイムリーに情報を活用できる仕組みを構築し、社内の情報の利活用を促進することが可能です。これにより、経営判断の迅速化、業務改善活動の短期化など、さらなる競争力の向上を実現します。 - 業務効率化/生産性向上
SAP S/4HANAでは、後続の業務に情報が引き継がれることで情報の二重入力や照合作業などを省力化できるほか、各業務の実行結果に基づき必要となる会計処理が自動的に生成される仕組み(自動会計仕訳機能)が用意されているため、データの集計/加工は不要であり、データ不整合/入力の多重化を削減します。
また、SAP S/4HANAでは、システムに組み込まれたアナリティクスの活用によって業務プロセスデータを様々な切り口で分析でき、そのデータをリアルタイムで可視化しすることで、継続的な業務改善を可能とします。 - 信頼性(内部統制の強化)
SAP S/4HANAは、内部統制の観点から、情報システムに求められる統制機能(IT統制)を標準で用意しているほか、業務プロセスに潜在するリスクに対応する統制機能(業務統制)も組み込んでいます。これらを活用する事で、企業内の業務の正当性を保証する事ができます。
また、国際会計基準(IFRS)にも対応しており、海外での取引がある場合や海外でグループ会社を展開している場合でも、業務プロセスの正当性の担保や内部統制の強化を実現できます。
SAP ERPのサポート終了に伴う今後の選択肢とは?
現在、SAP社のERPパッケージの中で新たに導入できるのは第四世代のSAP S/4HANAのみとなっています。また、SAP ERPのメインストリームサポートは2027年(条件次第では2025年)で終了となります。
それでは、現在SAP ERPをご利用中の企業は、今後どのような対応を考えていく必要があるのでしょうか?
ここでは、今後の対応策として、①SAP S/4HANAに移行する ②継続利用する ③別のERPに乗り換える の3つをご紹介します。
- 第四世代SAP S/4 HANAに移行する
1つ目は、SAP社からも推奨されている第四世代SAP S/4HANAへ移行することです。
オンプレミス型とクラウド型の双方に対応していることや、高速なデータ処理が可能なこと、感覚的で分かりやすいユーザーフェイスであるFioriを利用できるなどのメリットがあります。 - SAP ERPを継続利用する
2つ目は、現状のままSAP ERPを継続利用することです。
SAP ERPのメインストリームサービスは2027年で終了(延長保守費用を払うことで2030年まで延長可能)します。
サポート期限が切れた後でシステム障害が起こった際のリスクや、新たな機能が追加されるメリットがないことから、SAP社からは推奨されていません。
*より詳しい情報は「SAPサポートを第三者保守に切り替えるリスクとは?(vol.17)」をご覧ください。 - SAP製品以外のERPパッケージ製品に移行する
3つ目は、SAP ERPの現環境を放棄して、他社のERPパッケージ製品に移行することです。
SAP社以外にも数多くの企業がERPパッケージ製品を提供しています。新たにERPパッケージ背品の選定、要件定義~開発・導入までを行うことにより、自社の業務に合わせたシステムをゼロベースで構築することが可能です。
しかし、トータルで見たときに以前より導入/保守工数がかかったり、蓄積してきたデータやノウハウが活用できなくなる可能性があります。
*より詳しい情報は「SAP 2027年問題とは?(vol.11)」をご覧ください。
まとめ
これまで、SAP ERPについて、基本的な特徴や他社製品との違い、今後の対応を解説して参りました。
繰り返しになりますが、SAP ERPのメインストリームサポートは2027年(条件次第では2025年)で終了してしまいます。そのため、業務とシステムの現状を正しく把握し、今後の対応策を早い段階から検討する必要があります。
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本記事は、2023年2月1日時点の情報を基に作成しています。
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