SAP 2027年問題とは? ~SAP S/4HANA移行という選択肢を解説~(vol.11)

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IT業界で叫ばれているSAP 2025年問題ですが、20202月にSAP 2027年問題に延長となったのをご存知でしょうか?

本ブログでは、そもそもSAP 2027年問題とは何なのか、どうして2025年問題から2027年問題となったのか、SAP ECC6.0ユーザは2027年問題に対してどういった選択を取ることができるのか、わかりやすく丁寧に解説します。

SAP 2027年問題の概要

まずSAP 2027年問題について解説する前に、2025年問題について解説しなければなりません。
2025年問題とは、ドイツのSAPが提供するERPパッケージの保守サポート期限(2025年末)に伴う諸問題を指しています。
世界的に高いシェアを誇るSAP ECC6.0ですが、日本国内でも2000社以上が導入していると言われており、本製品の保守サポート終了は導入企業にとって非常に大きな影響を及ぼします。
各企業は様々な方法で2025年問題の対応を検討してきましたが、20202月、SAP社は保守サポート期限を2027年末まで2年間延長することを発表しました。
そのため2025年問題は2027年問題へと変化することになりました。

SAP 2027年問題が延長になった理由

なぜSAPはSAP ECC6.0の保守サポート期限を2025年末から2027年末へと2年間延長したのでしょうか?

その答えは非常にシンプルで、SAP ECC6.0ユーザの声を反映した結果だと思います。
「業務に与える影響が大きく、対応策がまだ検討できていない」、「この機会に大規模な業務改革を行い、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていくための時間が欲しい」など、多くのSAP ECC6.0ユーザの現状を踏まえ、SAPは延長を発表されたのだと考えます。

SAP 2027年問題に対する選択肢

さて、2027年問題について解説したところで、SAP ECC6.0ユーザは2027年問題に対してどのような選択肢が取ることができるのでしょうか?

本ブログでは主要な選択肢として3点紹介します。

  1. SAP S/4HANAへの移行
  2. 他ERPパッケージへの移行
  3. SAP ECC6.0の継続利用

SAP S/4HANAへの移行」

SAPが提供する最新のERPパッケージがSAP S/4HANAです。
SAPSAP ECC 6.0からSAP S/4HANAへの移行を推奨しており、SAP ECC6.0ユーザにとって最も検討されている案だと思います。
メリットとしては、SAP HANAと呼ばれる高性能なインメモリデータベースを利用していること、Fioriを始めとする新たなUIUXを利用できること、その他SAP S/4HANAの最新技術や機能、サポートを享受できることなどが挙げられます。

「他ERPパッケージへの移行」

SAP ERP以外にも国内外問わず、多くのERPパッケージが提供されています。特に国産ERPパッケージについては、国内の法規制対応やアドオン開発による各領域特化のソリューションの提供などが行われています。
メリットとしては、自社の業務に適したERPパッケージを選定できること、SAP S/4HANAと比較してコスト面での利点が出やすいことなどが挙げられます。

SAP ERPの継続利用」

2027年問題の根本的解決にはなりませんが、SAP ECC6.0の継続利用も考えることができます。
SAP ECC6.0のメインストリームメンテナンスと呼ばれる保守サポートの期限は2027年末になりますが、2%の延長保守費用を支払うことで、2030年末まで3年間の保守サポート延長を行うことも可能です。
またSAPは推奨していない方法ですが、第三者保守サービスへの移管という案も選択肢のひとつになっているようです。
メリットとしては、業務や運用を大きく変更しなくてもよいことなどが挙げられます。

SAP S/4HANA への移行という選択肢

前章で述べた3つの選択肢のうち、多くのSAP ERPユーザが検討するSAP S/4HANAへの移行について、選択した際にどのような点に気をつけるべきなのか、3点紹介したいと思います。

  1. 正しい業務の在り方の検討
  2. SAP ERP 6.0とSAP S/4HANAのFit & Gap
  3. 集約されたデータの活用法

 「正しい業務の在り方の検討」

基幹システムの刷新を期に業務の在り方を見直す企業も多いかと思います。
その際に気にして欲しいのはシンプルかどうかです。
日本企業に多い例として、ERPパッケージの導入に際し、現在の業務に合わせる形で様々なアドオン開発を行っていることが挙げられます。
ある程度は仕方がないかもしれませんが、SAP S/4HANAS/4シンプルを指しています。
運用や保守、今後のアップグレードを考えればこそ、現在の業務を新しい機能で置き換えられないか検討して欲しいと思います。

SAP ERP 6.0SAP S/4HANAFit & Gap

同じSAPから出ているパッケージとはいえ、SAP ECC 6.0からSAP S/4HANAへ移行する際には少なくない影響が発生します。
現行環境と新環境の情報を精査し、どの範囲に何本の修正が入り、それぞれどういった対応が必要なのか、事前に判断しなければなりません。
そのためにはPoCProof of Concept)や事前アセスメントを行うことが有効です。
使用していないトランザクションやプログラムがあれば、その分修正対象は少なくなりますし、どのようなSAP Noteを参照すればよいのか事前に分かっていれば、修正にかかる工数を正確に見積もることが可能となります。

「集約されたデータの活用法」

SAP S/4HANA導入に際し、無事に稼働させることだけを目標にしていないでしょうか。
ERPの本来の目的は集約したデータを分析しリソースを最適に活用することです。
最新の技術によってリアルタイムに集約された膨大なデータをどのような経営判断に活かしていくのか、事前に検討しておく必要があります。
DXを進めていく上で、AIIoT、ビッグデータなどを得意とするSAPソリューション、及び外部ソリューションとの連携も候補の1つとなるかもしれません。

SAP S/4HANAへ移行する3つの方法

SAP ECC6.0ユーザがSAP S/4HANAに移行するには、以下3つの選択肢があります。

  1. コンバージョン(ブラウンフィールド)
  2. リビルド(グリーンフィールド)
  3. 選択データ移行

1. コンバージョン(ブラウンフィールド)

現用のSAP ECC6.0の設定/アドオン/データをそのままSAP S/4HANAへ移行する方式です。
既存の環境やアドオンを引き継ぐことができるため、業務フロー変更を極力抑え、現場業務への影響を軽減できます。また、移行コストや期間を抑えることも可能です。現行業務フローの踏襲を基本とするため、SAP S/4HANA移行による抜本的な業務改革が難しいという側面があります。

2. リビルド(グリーンフィールド)

現用のシステムにとらわれず、ゼロベースで業務プロセスを見直し、新しいシステムとして再設計・再構築する方式です。
システム構築と同時にSAP標準テンプレートに合わせる形で業務プロセスの見直し・刷新を行うことが可能です。既存のシステムからの脱却による業務プロセスや組織への影響に加え、アドオンの再開発やカスタムコードの修正が必要となる場合もあり、費用や移行にかかる時間も大きくなります。

3. 選択データ移行

現用のSAP ECC6.0にある任意のデータを選択して、SAP S/4HANAへ移行する方式です。
特定の期間/会社コード/モジュール のデータのみを移行したり、差分データを段階的に移行することでダウンタイムを極小化したり、複数のインスタンスを統合しながら移行したりできます。データの整合性を維持するためには、移行対象となるデータを十分に検討し分析する必要があります。
*選択データ移行で出来ることは「SAP 選択データ移行 とは?(vol.45)」のブログ記事をご覧ください。また、選択データ移行の仕組みは「SDT(Selective Data Transition)によるSAP S/4HANA移行のメリットとは?(vol.93)」にて解説しております。

※SAP S/4HANAへの移行方法に関する詳細は、「SAP おすすめの移行方法とは? ~3つの選択肢を解説~ (vol.36)」で解説しておりますので、併せてご覧ください。

まとめ

SAP 2027年問題について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
SAP ECC6.0の保守サポート期限が2年間延長されたものの、基幹システムの刷新を考えるための長い猶予が与えられた訳ではありません。
周囲の様子を見ているだけであれば、すぐにその時期がきてしまうことでしょう。
この期間は自社のシステムを見つめ直し、正しい業務の在り方を検討し、社会の急速な変化に対応できる体制を整える、そのような期間にしなければなりません。

当社ではSAPパートナー・パッケージ・ソリューションの承認を取得した「SAP S/4HANA 移行トータル支援サービス」というSAP S/4HANA移行サービスも取り扱っております。
SAP移行検討にあたり、「果たして自社はSAP S/4HANAへの移行が可能なのか」、「業務に与える影響を最小限にするために、確実かつ迅速に移行したい」などの要件があれば、ぜひ当社までご連絡ください。

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