SAP IBP 導入によるSCM効率化を検討してみよう!(vol.38)

  • 公開日:2021.07.27

SAP ERP Central Component(以下、SAP ECC)6.0は2027年にメインストリームサポートを終了します。それに伴い、SAP ECC6.0ユーザ-はSAP S/4HANAへの移行検討を迫られているかと思いますが、これを機にSCM領域の効率化も検討してみてはいかがでしょうか?

SAPが提供するクラウドベースのSMCソリューションとして、SAP Integrated Business Planning(以下、SAP IBP)があります。
SAP IBPは、スマートSCMを実現する需給計画プラットフォームであり、シミュレーション・シナリオ比較による収益性の向上やサプライチェーン計画業務の効率化を図ることが可能となります。

そこで今回は、「SAP IBPの概要や導入効果」について解説していきます。

SAP IBP とは?

SAP IBPは、計画立案・シミュレートの実行部分と、計画予実の見える化・分析の部分を合わせて提供することで、需給管理のPDCA サイクルの効果的な実行を実現可能とするSCMソリューションです。
SAP IBPは、SAP HANAのインメモリテクノロジーを基盤とした高速処理を可能とするクラウドアプリケーションであり、サプライチェーンアナリティクス、what-if シミュレーション、アラート・アクション管理などの強力な機能を活用することで、変化を先読みし、迅速な意思決定をサポートします。

SAP IBPの機能は大きく5つあります。

  1. IBP for Sales & Operations:経営戦略と繋がった意思決定プロセス
  2. IBP for Demand:統計的需要予測と短期の需要変動の補正
  3. IBP for Inventory:サプライチェーン横断での在庫最適化
  4. IBP for Response & Supply:工場/仕入先能力制約を考慮した供給計画&割当計画と引当シミュレーション
  5. Supply Chain Control Tower:サプライチェーン横断での可視化&問題への気づきとアクション管理

 

  1. IBP for Sales & Operations の特長
    事業計画と需給計画の連携を図る為に、数量だけではなく金額に換算した需要計画・供給計画の立案とすり合わせを行います。複数シナリオを評価し、複数組織で合意の取れた計画により、経営目標の達成に向けた需給計画の立案を支援します。

    ・統計的な需要予測と関係者の意思を加味した、部門横断での需要計画の立案
    ・売上/利益に換算し、事業計画との整合を評価
    ・拠点横断での供給計画の立案
    ・売上/利益の観点からも需給マッチングのシナリオを検討/評価
    ・複数シナリオの比較・評価による需給計画、また経営判断の意思決定に情報活用

  2. IBP for Demand の特長
    中長期の統計的予測(月次・週次などのフォーキャスト)と短期の需要変動の感知(日次など)により、販売計画作成の省力化と精度向上に貢献します。

    ・複数の需要予測アルゴリズムを活用し、ベストフィットを自動算出することで、
     統計的に最適な予測結果を計画担当者に提供
    ・中長期の統計的予測を週次レベルから日次への分解から、直近の実績に基づいて
     短期的な需要予測を日次レベルで高精度に実施
    ・商品のライフサイクル、類似商品の過去実績、プロモーション計画 などを加味して予測へ反映

  3. IBP for Inventory の特長
    拠点・組織レベル(販社倉庫 工場)を横断して商品・原材料の在庫を全体最適化します。
    また在庫コストとサービスレベルの最適なバランスを実現します。

    ・拠点横断での計画立案-各拠点のバッファ在庫ではなく、全体を考慮した計画(全体最適化)-を実現

  4. IBP for Response & Supply の特長
    戦略的な分離ポイントと在庫バッファを使用して、サプライチェーンの品目フローをコントロールします。

    ・生産能力制約と原材料制約を遵守した実現性の高い生産・調達数量の計画を立案します
    ・中長期的のフォーキャストをもとに、需要優先順位と供給制約(資材、能力)を加味した
     製品割当計画を立案します
    ・短期的なフォーキャスト・受注の優先順位付けを満たすために、需要優先順位と供給ルールを加味した
     製品割当計画調整と納期シミュレーションが行えます

  5. Supply Chain Control Tower の特長
    サプライチェーンをエンドツーエンドで可視化し、供給中断の可能性を検出します。

    ・複数システム(計画系と実行系)からデータを統合し、サプライチェーン全体を可視化
    ・問題の早期発見・解決へ貢献するアラート・アクション管理

また、その他の特徴として、クラウド時代の新しい導入方法であるRapid Deployment Solution(以下、RDS)による早期導入が可能な点も挙げられます。
RDSは、SAP IBP のベストプラクティスであり、これを利用することにより3~6か月の早期導入を可能にします。
(RDSには、マスタデータやキー数値、ダッシュボードなどの事前設定情報、サンプルデータやテストスクリプトが含まれます)

SAP IBP 導入のメリット

サプライチェーン計画に関する典型的な経営課題として、以下が挙げられます。

  • 製品や顧客毎の収益性とSCM計画が結びついていない
  • 市場の需要ではなく経験と勘に基づいた計画となっている
  • 需要と供給のバランスが同期せず余剰在庫や欠品が発生する
  • ネットワーク全体で在庫を最適化できていない
  • サプライチェーン全体の実行状況や計画との乖離が把握できない

これらの課題解決に向けてSAP IBPを導入することで、

  1. 需要予測エンジン活用で販売計画作成を効率化・精度 UP
  2. 職人的な経験とカンに頼りがちな需給調整業務を効率化し、計画をより短サイクルに
  3. ダッシュボードとアラートで課題の早期発見・解決

が可能となります。

課題解決のポイントとなりうるSAP IBPの機能をご利用シーン別にいくつかご紹介します。

ご利用シーン1:販売計画の作成

1-1. 過去実績をベースにした需要予測

  • 中長期需要予測アルゴリズム
    複数の予測アルゴリズム/予測インプットデータの整備機能、
    複数軸での予測/実績誤差の算出機能などにより、
    統計的に最適な予測値の算出が可能です。

    パラメータ選択による予測モデルの設定や、
    商品(グループ)/拠点/顧客(グループ)などの切口での予実誤差分析による
    予測モデルの改善余地の見極めが可能です。

  • 商品ライフサイクルを加味した予測の調整
    商品のライフサイクル/類似商品の過去実績/プロモーション計画などを踏まえ、
    需要予測の精度を向上させます。

1-2. Excelによる担当者の意思入れ

  • 販売計画数量の入力 調整
    複数の観点(事業部、営業、マーケティング)で需要数量をレビューし、
    関連部門間でのコンセンサスと財務目標との整合性のとれた需要計画の立案を支援します。

    マスタを組み合わせることで計画入力のカテゴリを設定できます。
    計画入力のカテゴリは計画粒度に応じて自由に組み合わせ可能です。

1-3. 数量と金額の両面から計画を評価

  • 数量から金額に自動変換された計画データを確認でき、
    四則演算のロジックはキー数値の設定に入れることが可能です。

→これらの機能により、営業担当の負荷軽減や販売計画の精度向上を実現します。

 

ご利用シーン2:生産/販売/在庫(需給)計画の作成

2-1. 拠点横断の供給計画を立案(ご利用シーン:生産/販売/在庫(需給)計画の作成)

  • 計画展開のロジック
    販社/工場を段階的にもしくは多段階で跨る一気通貫での所要量正展開や
    工場供給計画の販社への逆展開を、
    目標在庫水準に沿った在庫計画/輸送/製造LTを考慮したオフセット、
    複数供給源、ラフカットな生産工程などを考慮して実行可能です。
  • 製品から原材料への展開
    製品毎に構成品の使用数をBOMマスタに登録し、
    同マスタによるBOM展開を行うことで原材料の必要数を算出できます。

2-2. Excel を利用した担当者による調整(マニュアル山崩し)

  • 計画生産数と生産能力シミュレーション
    工場の負荷状況を確認しながら、生産数の前倒し/後ずらし、シフト数の変更、
    別工場/別ラインへの割当などができます。

2-3. リソース・資材供給能力制約の計画を立案

  • 供給計画の立案手法の品揃え
    計画の手法として、大きく2通りをご用意しています。
    ①無限負荷計画:ヒューリスティック(制約なしでの供給計画)
    ②有限負荷&収益最大化:オプティマイザー(完納に向けた収益の最大化or費用の最小化)
  • 仕入先からの納入予定数の連携と制約計画
    納入希望数に対する納入回答数をアップロードした際に、
    どの仕入先構成品がどれだけ/いつ過不足が発生するかをアラートで確認できます。
    さらに納入予定数量を制約とした最適化計画を立案することができます。
  • 需要の優先順位付けと供給配分
    供給先に対する優先度を考慮して工場の供給数量を配分します。
    担当者の意思で配分数量をマニュアルで調整することも可能です。

→これらの機能により、需給担当の負荷軽減、部門間の調整・合意形成の促進、需給計画の短サイクル化を実現します。

ご利用シーン3:ダッシュボード/アラートによる監視

3-1. ダッシュボードを使った直観的な View

  • 複数システムのデータを統合したダッシュボード
    サプライチェーン計画/実績/KPIを全体的に一目瞭然できる為に、
    複数のPlanning Areaと他システムのデータを同一画面で表示します。
    情報を様々な軸/形式で表示、柔軟に集約/ドリルダウンでき、迅速な意思決定に寄与します。

3-2. アラートに対するアクション管理

  • アラートとアクション管理
    担当者はダッシュボードにて現在発生している計画上のアラートの確認と優先度が確認できます。
    アラートを選択することで該当の計画画面に遷移し、何がアラートの原因なのかを
    閾値のレベルに応じて塗り分けされた情報を確認することで、
    効率的な計画オペレーションをサポートします。

→これらの機能により、ダッシュボード活用によるPDCAの実行やアラートによる問題の早期把握と解決を実現します。

SAP IBP 導入事例:ローソン株式会社

SAP IBPの導入事例として、コンビニ大手のローソン株式会社があります。
SAP IBPの導入の背景は、”ローソン型次世代コンビニエンスストア”の実現であり、ローソン株式会社はこれまでにも機能子会社の株式会社SCIを設立し、みえる化や効率化にも積極的でした。

今回のSAP IBP導入は、機会/廃棄ロスの双方を削減する狙いがありました。
そのためには、在庫リスクを減らし、利益率を向上させる必要があり、それを実現できるのがSAP IBPでした。

結果、わずか8ヶ月で導入から実稼働までを実現させました。
新たなサプライチェーンを仕組化したことで、各工程のムダを排除することに成功。
チェーン全体の食品材料廃棄がおよそ56%も低減され、売上だけではなく、社会と環境にも大きく貢献する形となりました。

参照元URL:https://www.sapjp.com/blog/archives/21240

SAP IBP 概要&導入効果まとめ

SAPは、今回ご紹介したSAP IBPのような基幹業務のための様々なアプリケーションをクラウドでご提供しています。
これらは、SAP S/4HANAを中心として統合/連携されており、幅広くご利用いただくことでさらなる業務の効率化・高度化を図ることが可能となります。
SAP S/4HANAの導入や移行検討と併せて、SAP IBPを活用したSCM領域の効率化も検討してみてはいかがでしょうか。

当サイトでは、SAP 移行をご検討中の方や移行すべきか迷われている方に向けた資料をご用意しております。
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「SAP S/4HANAって、正直何ができるの?」
「SAP移行って、正直、どうすればいいの?」
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SAP S/4HANA移行に関する意思決定に向けた一助になるものと思います。

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本記事は2021年7月15日の情報を基に作成しています。製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、各製品・サービスベンダーのサイトからお問い合わせください。