SAP BW のパッケージ特性とは?(vol.63)
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SAP BW(SAP NetWeaver Business Warehouse)はSAP社が提供するBIパッケージ製品です。BIパッケージ製品は業務に必要なデータを参照、分析するためのツールですが、どのような特性があるかを理解し、利用することで本来の機能を最大限活かすことができます。BIパッケージ製品のカテゴリ毎の特性やデータ分析業務との関連性について紐解き、SAPデータ利活用における重要なポイントについて解説します。
BIパッケージ製品とは?
BIパッケージ製品は「BIツール」や「BIシステム」とも呼ばれ、業務に必要なデータを収集、集約、集計、可視化できるようにすることでデータ分析業務をスムーズに行うための製品として様々なベンダーから提供されています。広義のBIパッケージ製品には、データ収集を行うためのETL(Extract/抽出、Transform/変換および加工、Load/書き出し)、データ集約を行うためのDWH(Data WareHouse)が含まれますが、ここでは狭義のBIパッケージ製品を指すデータの集計、可視化について解説します。
BIパッケージ製品は下記2つのカテゴリに分類されます。
- エンタープライズBI
- セルフサービスBI
まず、「エンタープライズBI」ですが、SAPに代表されるERP(Enterprise Resource Planning)パッケージの普及に伴い、社内システムに蓄積された大量のデータを全社レベルで活用することを目的に提供され始め、レポーティング、OLAP(Online Analytical Processing)分析、統計解析、データマイニングなどの機能を有しており、経営企画部門や情報システム部門が主導して導入することが特徴となっています。なお、SAP BWは「エンタープライズBI」にカテゴリされています。
*ちなみに、「エンタープライズBI」について、昨今では「セルフサービスBI」と対比するために「Managed BI」と呼ばれることもあります。
次に、「セルフサービスBI」ですが、前述の「エンタープライズBI」の後発としてベンダーから提供が開始され、「エンタープライズBI」が全社レベルでのデータ活用を目指しているのに対して、個々の業務部門の担当者が自らの業務のために自身でデータを可視化することを目的としています。そのため、データの取り込みやレポート、ダッシュボードの作成が比較的容易にできるような機能を有しており、個々の業務部門が主導して導入することが特徴となっています。
「エンタープライズBI」と「セルフサービスBI」は企業内で併用可能です。各部門での最適なデータ分析環境を整備するためには、主幹部門を取り決め、役割分担を明確にすることが重要なポイントになります。
BIパッケージ製品とデータ分析業務の関係
BIパッケージ製品について「エンタープライズBI」、「セルフサービスBI」の2つ分類されていますが、基本的な機能はレポーティング、OLAP分析、統計解析、データマイニングとなっています。では、これらの機能の使い分けは何によって決定されているのでしょうか?それは、データ分析業務の習熟度によって決まります。
データ分析業務の習熟度は、次の3つのステージに分けられます。
- ステージ1:現状把握
- ステージ2:仮説検証
- ステージ3:予測分析
まず、「ステージ1:現状把握」ですが、これは「調査」、「報告」のために「何が起きた」、「どこで起きた」を「見る」ことが業務の中心であるため、BIパッケージ製品における「定型レポート」、「自由分析レポート」といったレポーティング機能やOLAP分析機能を利用します。
次に、「ステージ2:仮説検証」では、事象の「分析」を行うことで、「なぜ起きた」を「知る」ことが業務の中心となり、BIパッケージ製品における統計解析機能を利用します。
最後に、「ステージ3:予測分析」については、「起こりうる最善」を導き出すことが業務の中心となり、予測モデリングを行うためにBIパッケージ製品におけるデータマイニング機能を利用します。BIパッケージ製品では色々な機能を提供していますが、前述の通り、どの機能を使用すべきかという点についはデータ分析業務の習熟度に合わせて選択することが重要となります。
データ分析業務におけるSAP BWパッケージ(ETL/DWH)の役割とは?
「エンタープライズBI」にカテゴリされるSAP BWは、レポーティング、OLAP分析、統計解析、データマイニングといったデータ分析業務の習熟度の全てステージに対応した機能を搭載しています。ただ、実際にSAP BWを導入されている企業で多く利用されているのはどの機能でしょうか?高度なデータ分析業務を行う業務担当者は企業内ではごく一握りであり、SAP BW利用者のうち、大半が「ステージ1:現状把握」を業務の中心とする方々であると聞きます。
また、SAP BWは広義のBIパッケージ製品としてのデータ収集(ETL)、データ集約(DWH)も提供しているため、全社レベルのデータ利活用を謳う「エンタープライズBI」として組織や業務を横断的に統合したデータをSAP BWに格納、各部門の業務担当者はSAP BWのレポーティング機能を利用することで必要なデータを参照し業務を行っているかと思います。
一方で社内の様々な業務担当者が利用するため、各種データへのアクセスについては管理者によって適切な権限管理を行う必要があります。SAP BWは、データのアクセス要件に合わせて細かに権限設定を行うことで、ガバナンスの効いた全社レベルのデータ活用環境を実現しています。
SAP BWのパッケージ特性まとめ
SAP ECCを運用中の企業については、今後、SAP S/4HANAへの移行を検討する必要があるかと思いますが、SAP BWを導入されている場合、合わせてSAP BW/4HANAへの移行も検討されるかと思います。その際は、是非とも「エンタープライズBI」としてのSAP BWのパッケージ特性を把握し、自社のデータ分析業務の習熟度を加味した上で、データ分析環境を見直すことを推奨します。
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