SAPクエリとは? ~構成要素・作成方法・活用方法をわかりやすく解説~(vol.86)
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「SAPクエリとは?」、「作成するのは難しい?」、「どうやって活用する?」など、現在SAP ERPをお使いの方や、これからSAP ERPを導入しようと検討中の方の疑問を解消すべく、本ブログ記事では、SAPクエリの構成要素や作成/活用方法についてわかりやすく解説します。
*本ブログの「SAP ERP」は、「SAP ERP」および「SAP S/4HANA」を指します。
SAPクエリの構成要素とは?
SAPクエリとは、SAP ERPに標準搭載されている参照系の機能で、テーブル情報を一覧検索し、参照できるプログラムのことです。テーブル同士を結合して1つのテーブルのようなレイアウトでデータを参照することが可能であり、例えば、会計伝票ヘッダテーブル(BKPF)にある情報と会計伝票明細テーブル(BSEG)にある情報を組合せて一覧で参照することができます。
SAPクエリを構成する要素としては、ユーザグループとインフォセットというものがあり、これらを定義し、誰が、どのような情報を参照するかを決めます。具体的な作成方法は後述で説明しますが、基本的にはSAP GUIを使ってノンコーディングで実装できるため、SAP ERPを初めて触る方でも比較的簡単に実装することができるのが特徴です。
SAPクエリの構成要素
- ユーザグループ
ユーザグループとは、その名の通りユーザをまとめるグループです。
ユーザグループにユーザを割り当てることで、割り当てられたユーザがSAPクエリを使用することができるようになります。
ユーザグループ登録/変更/参照のトランザクションコードは、「sq03」です。 - インフォセット
インフォセットとは、SAPクエリ上で参照したい情報の諸元を定義するものです。
複数テーブルにわたる情報を参照する場合はテーブル結合が必要ですが、その場合はインフォセットで実装します。
インフォセット登録/変更/参照のトランザクションコードは、「sq02」です。
上述の通り、SAPクエリを構成する要素は大きく2つあり、これらを作成することではじめてSAPクエリの作成に着手することができます。次章では、ユーザグループ/インフォセットについても少し触れながら、SAPクエリの作成方法について解説していきます。
SAPクエリの作成方法とは?
本章では、SAPクエリの作成方法について、
1.ユーザグループの作成、2.インフォセットの作成、3.SAPクエリの作成
の順で解説します。
- ユーザグループの作成
はじめに、トランザクションコード「sq03」を入力し、ユーザグループの登録画面に遷移します。
ユーザグループ名を入力し、登録ボタンを押下後、指示に従い必要事項を入力すればユーザグループの作成は完了です。
この手順は特に技術的なことを考える必要はありませんが、ユーザグループの命名規則などは予め決めておくとよいでしょう。 - インフォセットの作成
次に、トランザクションコード「sq02」を入力し、インフォセットの登録画面に遷移します。
インフォセット名を入力し、登録ボタンを押下します。データソースを設定する画面に遷移しますが、単純なテーブル結合で実装できる場合は「基本テーブル使用テーブル結合」という項目にチェックし、基本テーブル、つまり主となるテーブル名を入力します。それ以外にも、「プログラムによるデータ読み込み」など、ABAPコーディングでインフォセットを作成することも可能です。
基本情報の登録が完了すれば、テーブルの結合条件をSAP GUI上で操作し設定を行います。また、SAPクエリで使用する項目を項目グループとして登録します。項目グループに登録されている項目がSAPクエリで使用できる項目となりますが、逆に言うと、項目グループに登録されていない項目はSAPクエリでは使用できないため注意が必要です。インフォセットでは全テーブルの全項目を項目グループに登録しておくのが望ましいでしょう。
インフォセットの作成が完了すれば、インフォセットの登録画面上部のタブにある生成ボタンを押下することでインフォセットが生成(=有効化)され、使用できる状態となります。
その後、インフォセットの登録画面にあるロール/ユーザグループ割当ボタンを押下し、作成したインフォセットを1で作成したユーザグループへ割り当てます。
以上で、インフォセットの作成は完了です。 - SAPクエリの作成
最後に、トランザクションコード「sq01」を入力し、SAPクエリの登録画面に遷移します。
SAPクエリ名を入力し、登録ボタンを押下します。
SAPクエリでは、一覧画面に出力する項目の他に、選択項目も設定することができます。選択項目とはSAPクエリ実行時に選択項目に条件を指定して実行することが可能です。例えば、選択項目に会計年度を設定していれば、2022年度のデータのみ出力したい場合、SAPクエリ実行時に選択項目の会計年度に条件値「2022」を指定して実行できるということです。
また、クエリバリアントという予め決まった条件値がセットされたパラメータを作成することも可能です。SAPクエリ実行時にクエリバリアントを指定して実行すれば、毎回同じ条件でSAPクエリを実行することができ、大変効率が良いのが利点です。
以上で、SAPクエリの作成は完了です。
このように、SAPクエリの作成には大きく3つの手順がありますが、作成難易度はそこまで高くなく、一通りの流れが把握できれば、開発が苦手な方でも実装しやすい機能だと思います。
SAPクエリの活用方法とは?
SAPクエリの作成方法はわかったかと思いますが、どう活用すればよいのでしょうか?
主な使用用途としては、リスト検索やリスト表示など、簡易的なレポート機能として活用できます。
例えば、単純にテーブルを参照するだけでは見たい情報が足りないシーンにおいて、SAPクエリは活用できます。
SAPクエリはSAP ERPの標準機能であるため、2つないし3つのテーブルを結合してリスト化したデータが参照したいなどの要件であれば、実装にそこまで工数をかけずに対応することが可能です。
また、SAPクエリのもととなるインフォセットはユーザグループに紐づいているため、SAPクエリで必要なテーブル情報だけをユーザが閲覧可能な状態にしておくことで、権限制御を容易に行うことが可能です。これからSAP ERPの導入を予定されている方にとっては、SAPクエリの機能を理解し、有効活用することが、SAP ERPを上手に使いこなす第一歩となるかもしれません。
まとめ
ここまで、SAPクエリの構成や作成/活用方法を解説して参りました。
SAPクエリの良いところは、SAP ERPの標準機能でありながら、テーブル参照だけでは物足りない要件を満たすことができる、まさしく痒いところに手が届く機能だということです。
SAP ERPの標準機能を有効活用することで日々の業務の作業効率アップにつながるかと思いますので、まずはSAPクエリをご活用してみてはいかがでしょうか?
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BusinessSPECTREは、SAP社認定のソフトウェアであり、SAP ERPに格納された大量の業務データを素早く抽出し、Microsoft SQL Serverへ転送します。
BusinessSPECTREは、今回ご紹介したSAPクエリの実行結果をMicrosoft SQL Serverのテーブルに格納する仕組みを有しており、SAP ERPの標準テーブルについては予めSAPクエリまで実装(=SAP ERPの複雑なデータを、データ分析に適した形に変換)してご提供しているため、環境構築後すぐにご利用いただける製品となっています。
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