SAP利益センタで経営判断を強化!役割や活用法を解説 (vol.116)

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企業経営においてに重要な管理会計ですが、SAPシステムには管理会計に役立つ機能が標準で用意されています。
「利益センタ」や「原価センタ」は、企業の収益及び費用の発生源を把握するために用意されているSAPシステムの標準機能です。SAPシステムに登録する時に収益を「利益センタ」に割り当てることで、効率よく管理会計を行うことが出来ます。
本記事は、管理会計に役立つSAPシステムの「利益センタ」の使用方法と活用のメリットについて解説します。
*本ブログのSAPシステムとは、「SAP ECC6.0」および「SAP S/4HANA」を指します。

管理会計とは?

SAPシステムの「利益センタ」は、管理会計を行う上で重要な役割を担っています。「利益センタ」について説明する前に、管理会計の概要について簡単に説明します。

管理会計とは、企業会計の一分野であり、会社の中で経営の判断をするために活用する会計情報を収集し役立てることを目的としています。例えば、原価管理や予算実績管理などが該当します。管理会計で最も重要なことは、現在、企業がどのような状況にあるかを把握することです。企業の置かれている状況を正確に把握することで、会計情報に基づいた経営判断が可能となります。
また、会計情報を継続的に蓄積することで過去の実績を把握するだけでなく、将来の業績の予測をより正確に行うことが出来ます。つまり、管理会計をしっかりと行うことで、直感や経験だけに頼らず、会計情報に基づいて合理的な判断が可能となります。
管理会計を実施する際、最も重要なことは利益を把握することです。SAPシステムでは導入時に適切に設定し、「利益センタ」を使用することで各企業の管理会計の形式に適した単位で利益を把握することが出来ます。さらに、利益の把握だけでなく、収入や費用のリアルタイムな分析や 詳しい内訳を追跡することも可能です。

SAPシステムの利益センタとは?

「利益センタ」は、「組織内のどの管轄で利益が発生したか」を記録するための最小のユニットです。言い換えると、「何に起因して利益が生まれたのか」を記録するための最小ユニットとも言えます。「利益センタ」を使用することで、事業部単位、ユニット単位、商品単位どの単位で利益を管理することが可能になります。

「利益センタ」とよく比較されるユニットとして「原価センタ」があります。
「原価センタ」は「何に起因して費用が発生したのか」を記録するための最小ユニットと言えます。

利益センタと原価センタの違いは、以下の通りです。
・利益センタ …「組織内のどの管轄で利益が発生したか」を記録するための最小のユニット
・原価センタ …「組織内のどの管轄で費用が発生したか」を記録するための最小のユニット

大きな違いは、「利益センタ」が収益を管理するためのユニットであるのに対し、「原価センタ」は費用を管理するためのユニットであるということです。

SAPシステムの利益センタ使用方法

では、実際にSAPシステムで「利益センタ」を利用するにはどのような作業が必要となるのでしょうか。「利益センタ」の使用方法ついて説明します。

【作業1】 使用したい「利益センタ」を登録

まず、「利益センタ」を使用する前に、使用したい「利益センタ」をSAPシステムに登録する作業が必要となります。管理会計には財務会計のように厳密な法的規則はないため、管理会計の粒度や運用方法は企業によって異なります。SAPの「利益センタ」では事業部単位、ユニット単位、商品単位など、企業が分析したい単位に合わせて柔軟に設定することが出来ます。そのため、企業が現在利用している管理会計の粒度や運用方法を変える必要はありません。

【作業2】 収益を利益センタに割り当てる

「利益センタ」を登録した後は、収益を利益センタに割り当てる作業を行います。この作業は日々の取引をSAPシステムに登録する際に行うため、基本的にはSAPシステムを利用するユーザー企業にて実施します。この割り当て作業は簡単に行うことが可能です。以下では、実際の画面にて、収益を「利益センタ」に割り当てる手順を説明します。

例えば、「販売部門Aが1,000円の売上を上げた。」というケースを考えます。
この取引に関する仕訳は以下となります。

借方:普通預金 / 貸方:売上

【借方:普通預金/ 貸方:売上】という取引をSAPシステムに登録します。この時、売上の割り当て先を、事前に登録した「利益センタ」の中から選択します。今回のケースでは、売上1000円を販売部門Aに割り当てるため、販売部門Aの「利益センタ」を選択します。これにより、販売部門Aの「利益センタ」に1,000円の残高が反映されます。

利益センタ割り当て

このようにSAPシステムでは発生した収益を「利益センタ」に割り当てることで、収益がどの「利益センタ」に属するものであるのかを確認することができます。これにより、各「利益センタ」がどの程度の収益をあげているかを容易に把握することができます。

SAPシステムで利益センタを活用するメリット

「利益センタ」を活用するメリットは以下3つです。

  1.  様々な集計単位での分析が可能
  2. 原価との対応関係が明瞭 
  3. リアルタイムでの集計が可能

1. 様々な集計単位での分析が可能

「利益センタ」の特徴の一つとして、様々な集計単位での分析が可能な点が挙げられます。管理会計において、経営層が分析したい単位は様々です。例えば、会社単位で利益を把握したいというニーズや、事業部毎に業績を分析し経営戦略の立案に役立てたいというニーズが考えられます。他にも、各商品単位での利益を分析し、商品戦略の最適化に役立てたいというニーズも考えられます。SAPシステムでは、「利益センタ」の階層構造を適切に設定することで、これらの様々なニーズに柔軟に対応出来ます。

利益センタ集計単位

「利益センタ」は上の図のような階層構造を持っています。図に記載されている「利益センタグループ」とは、複数の「利益センタ」をまとめた単位を指します。「利益センタ」に割り当てられた収益は、自動的に「利益センタグループ」にも反映されます。「利益センタグループ」を適切に設定すれば、経営層が求める単位で柔軟に利益を集計することが可能です。

また、SAPシステムではレポートの集計軸として、「利益センタ」や「利益センタグループ」を設定出来るため、経営層の要望に応じた収益分析レポートを簡単に作成することも出来ます。

2. 原価との対応関係が明瞭

「利益センタ」の特徴の二つ目として、収益と原価との関係把握が容易である点が挙げられます。管理会計において、経営層が確認したい要素は利益です。利益は収益から費用を差し引いて計算されるため、利益を確認するためには、収益だけでなくその収益を生み出すために使用した費用を把握する必要があります。

SAPシステムでは、収益を管理するためのユニットである「利益センタ」と、費用を管理するためのユニットである「原価センタ」が標準で用意されています。「利益センタ」と「原価センタ」の関係は、以下の図のように紐付いています。

利益センタ原価対比

上の図に示されているように、SAPシステムでは「利益センタ」の子階層に「原価センタ」が1:Nで紐づいています。この階層構造によって収益だけでなく、その収益の発生に要した費用を把握出来ます。さらに、「利益センタグループ」を適切に設定することで、任意の集計単位で発生した利益と発生した費用の対応関係を把握することも可能です。また、利益センタや原価センタに集計される値は、伝票を通じて集計されるため、発生した利益や費用の詳細を伝票単位まで遡ることができます。これにより、任意の単位での収益および費用の分析が可能になるだけでなく、発生した費用や収益のトレーサビリティを確保することが出来ます。

3. リアルタイムでの集計が可能

SAPシステムの特徴として、リアルタイムで管理会計を行う事ができるという点も挙げられます。
経営層のニーズとして、意思決定に必要な情報を素早く集めたいというニーズがあります。しかし、複数拠点を抱えている企業は管理会計を行う上で必要な情報を素早く集めることが困難になりがちです。特に、各拠点で使用しているシステムが異なる場合は、拠点毎に意思決定に必要な情報を出力し、レポートにまとめ直す作業が必要となるため、情報をリアルタイムで確認する事が困難になります。

一方、SAPシステムに登録されたデータは、拠点を横断して一元管理されているため、各拠点の情報をSAPシステムから確認する事が出来ます。これにより、すぐに原価や利益などを参照できるだけでなく、各拠点が意思決定に必要な情報を出力し、レポートにまとめ直す工数を削減できます。
また、前述のとおり、様々な集計単位でのレポート出力や、発生した費用や収益を伝票単位で追跡することも可能です。以上の点から、SAPシステムで「利益センタ」を活用することで、意思決定の迅速化と業務効率の向上が期待できます。

まとめ

ここまで、SAPシステムの「利益センタ」について解説してきました。
管理会計を行う際に利益の把握は重要です。日々の取引をSAPシステムに登録する際、収益を「利益センタ」に割り当てることで、複数拠点を抱える企業であっても、意思決定に必要な情報を素早く集計、効率よく管理会計を行うことが可能になります。ぜひ、本ブログを参考に、「利益センタ」の設定してみてください。

本ブログ記事では管理会計に役立つ「利益センタ」について解説しましたが、SAPシステムで管理会計を行う際には製造原価管理機能にも注目する必要があります。
SAP
システムの製造原価管理機能は、ロジスティクス機能全般が財務会計モジュールに直結しているため企業会計原則を担保出来ます。そのため、財務会計目的での利用には適した機能と言えますが、財務会計のデータに影響を与えずに、管理会計目的で原価や収益性を分析するにはシステム上の制約が発生してしまいます。

この課題を解決するソリューションとして、電通総研では、管理会計目的で品目別実際原価を管理できるSAP専用の原価パッケージ「ADISIGHT-ACS」をご提供しております。ADISIGHT-ACSは、原価計算に必要なSAPシステム内部の生産/購買/会計データをSAPシステムの外部へ抽出することで、財務会計目的での制約にとらわれることなく、品目別の実際原価計算を実現します。

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※本記事は、2024121日時点の情報を基に作成しています。製品/サービスに関する詳しいお問い合わせは、電通総研のWebサイトからお問い合わせください。

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