SAP 導入の原点を考える ~なぜSAP S/4HANAなのか~(vol.22)

  • 公開日:2021.04.06

お客様はなぜERPを導入しようと思ったのでしょうか? ERPに何を期待していたのでしょうか?
SAP ERPに限らず、ERPを導入しようと考えられた際、導入の目的が明確に設定されていたはずです。
サポート期限が2025年から2027年に延期にはなりましたが、いずれSAP S/4HANA移行というステップが到来します。

SAP移行のタイミングで、ERP導入の原点である「目的」をあらためて考えることが必要ではないでしょうか?
電通総研は、JSUG(Japan SAP User Group)の「S/4への移行を考える会」やSAPジャパン社と協調して、このSAP S/4HANA移行の「目的」を作るワークショップと、SAP S/4HANA移行の実現に向けた「計画」を作るワークショップを開催しております。

本ブログでは、ERP導入の原点について考えるためのヒントを解説いたします。

JSUG「S/4への移行を考える会」の概要

本会は、JSUG SAP S/4HANAイニシアティブの下、2020年7月7日にJSUGの西日本フォーラムの分化会として発足。
同年8月20日にJSUGの部会として新たに承認されました。
これまで2回の会合を開催し、毎回150名超の申込みがある、とても関心の高い部会となります。
弊社も第1回の会合にて「電通総研が考えるアセスメントの重要性」と題して、SAP S/4HANA移行におけるアセスメントの重要性について講演させていただきました。
それでは、以下に本部会の概要をまとめます(発足当時の内容です)

<目的>
SAP S/4HANAへの移行方法、上申の仕方、共同アセスメントおよび移行後のDXの在り姿についての情報交換、事例共有すること

<部会長>
大和ハウス工業株式会社 情報システム部 グループリーダー 加藤 純様

<オピニオンリーダー(社名のみ記載)>
ベニックソリューション株式会社、コベルコシステム株式会社、総合メディカル株式会社、株式会社近鉄百貨店、トラスコ中山株式会社、株式会社ニチレイ

<SAPジャパン株式会社 支援担当者>
CFOソリューション推進室 関口様、ソリューション統括本部 ビジネス開発部 内藤様

SAP ERP導入の原点とは?

SAP ECC6.0のメインストリームメンテナンス期間が2年間延長されたため、これからSAP S/4HANAへの移行について検討を開始されるお客様も多いと思います。
移行方式として、グリーンフィールド/ブラウンフィールド/選択式移行の3種類がありますので、どの移行方式を選ぶのが自社に最適な道なのか判断がつかないという声を少なからずお聞きします。

そのようなお客様は、
・現在のSAP ECC6.0が安定稼働しているため、移行することで成果がでると言えない
・現状に一定の満足度があるため、新たなTo Be像(あるべき姿)を描ききれていない
・移行にかかる費用に対し、効果が見出せずROIが出ない
という課題をお持ちではないかと考えます。

ここで、あらためて考えてみてください。現在ご利用されているERPの導入を検討された際、
① お客様企業が中期経営計画や長期ビジョンで掲げられた将来像や経営目標を描く
② 具体的な対象を設定し、実施する内容を検討する構想を立案する
③ 構想した施策について、実現に向けた計画を策定する
という検討を実施され、ERPの導入を推進されたと思います。

今回のSAP S/4HANAへの移行も同じだと考えています。
同じSAP社のシステムではありますが、ECC6.0とS/4HANAでは、アーキテクチャや設計思想が大きく異なっており、実装できるレベルが拡大しています。
システム化の原点に立ち返り、お客様の基幹業務システムとしての「あるべき姿」をあらためて見つめ直す機会が必要となっています。

JSUG 「S/4への移行を考える会」を始めとした様々なお客様との対話の中から、上記の課題認識を再確認し、
① SAP S/4HANA への移行に際して、「目的」を作る/明確にすること
② 移行の目的が明確なお客様には「計画」を作ること
の重要性があらためて認識され、2つのワークショップ開催を企画されるに至りました。

なお、弊社もこのワークショップのファシリテータとして協力させていただいております。

SAP ERP導入の原点である「目的」を作るワークショップ概要

この「目的」を作るワークショップは、SAP社の「Move in Motion」という「変革の構想づくり」の位置付けのワークショップです。
このワークショップは、大きく4つのパートで構成されています。
これらの内容について、お客様の関係する多様な部門・職責の方(3~4名程度)にお集まりいただき、弊社コンサルタント(1名)及びSAPジャパン様のファシリテートのもとで丸1日(物理開催)もしくは、1日あたり2~2.5時間のセッションを2日間(オンライン開催)にわけて実施・検討いたします。

① アクティビティA:なぜ?(WHY)
・お客様の中期的な経営目標を確認
・現状の課題(経営・ビジネス・ITを含む)の洗い出し
・デジタル技術で解決したい課題の設定
・デジタル化のプラン・取組みについて整理
・デジタル化に向けてのSWOT分析

②アクティビティB:何を?(WOW)
・デジタル化に取り組むべき具体的領域/内容を構想
・その実現に向けてのロードマップ作成

③アクティビティC:どのように?(HOW)
・デジタル化の範囲の識別
・SAP S/4HANAのデプロイメントオプションと移行方法の確認
・投資対効果と移行全般に関するSAPツール類の確認

④アクティビティD:次のステップの提案とCXOへのプレゼンテーションドラフト
・発見したことと今後の作業についてのメッセージを要約

出典)SAP社 「目的」を作るワークショップの概要資料より 

SAP ERP導入の「計画」を作るワークショップ概要

この「計画」を作るワークショップは、SAP社の「Value Discovery」という「価値発見ワークショップ」の位置付けのワークショップです。
このワークショップは、上記の「目的」を作るワークショップで作成された成果物をベースに、価値創出できる領域や機械の細部を確認・定義し、ソリューションのロードマップ及びビジネスケース(投資対効果モデル)を作成するものです。
こちらのワークショップはお客様のIT部門の方(2~3名)にお集まりいただき、弊社コンサルタント(1名)のファシリテートのもとで2時間程度のセッション(1日のみ物理/オンライン開催共)で実施・検討いたします。

出典)SAP社 「計画」を作るワークショップの概要資料より 

まとめ

SAP ECC6.0をご利用されているお客様におかれましては、「2025年問題」となっていたSAP ECC6.0のサポー弊社としましては、お客様がSAP S/4HANAへの移行をご検討される上で、あらためてERP導入の原点である「目的」を見つめ直してみること、そして「目的」を踏まえた上で実現に向けた「計画」を立案することで、メインストリームメンテナンス期限が延長された2年間を有効に活用されることをご推奨申し上げます。

本内容は2021年4月時点の内容となっております。
お客様がSAP S/4HANA移行をご検討されるうえで有益な情報を弊社ホームページやブログで随時ご提供させていただきます。
電通総研は、SAP S/4HANAと共にお客様のビジネスの成功を一緒に実現するお手伝いをさせていただきます。