SAP 移行 ツール 重要な2つの基礎知識(vol.9)
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最近、徐々にではありますがSAP S/4HANAへの移行が盛り上がってきております。
皆様の状況はいかがでしょうか?
ユーザーの皆様にとってはわからない亊が多く、苦労をなさっていませんか?
特に今後SAP S/4HANAへの移行に向けたアセスメントを行う予定の方は、ある程度の知識を持って臨まないと、ベンダーの話す内容が理解できずに、必要な作業が漏れたり、余計な費用や期間がかかってしまったりと、様々な問題に直面する可能性があります。
そこで、本ブログでは、ユーザーの皆様にも知っておいて頂きたい亊のひとつとして、SAP移行(コンバージョン)に使用するSAP標準ツールの中から、2つの重要なツールをピックアップし、具体例なども含めながら基礎的な内容を解説していきます。
SAP 移行 で使用する標準ツールとは?何かできる?
ユーザーの皆様とSAP S/4HANA移行に向けたアセスメントについてお話をすると、「プログラム改修の規模はわかるのか?」とか、「SAP S/4HANAに移行するとどのような影響が発生するのか?」といったご質問をいただきます。
今後SAP S/4HANAに移行する際の計画立案やコスト、リスクなどに関わってくる事なので、当ブログを読まれている皆様も関心が高いのではないかと思います。
では、なぜアセスメントを実施するとアドオンの改修や移行に伴う影響が把握できるのでしょうか?
まずは一般的なアセスメントの実施内容について、簡単に記載させていただきます。
・アドオンの改修内容の把握 :ABAP Test Cockpit(以下、ATC) + ベンダーのノウハウ
・SAP S/4HANA移行に伴う影響の把握:Simplification Item Check(以下、SI-Check) + ベンダーのノウハウ
どちらもベンダーのノウハウといったプラスαの情報はありますが、基本的にはSAP ERPの標準ツール(ATCやSI-Check)を使用してベースとなる情報を取得し、それらの情報を分析することによって、アドオンの修正範囲やSAP S/4HANA移行に伴う影響を把握することが可能となります。
次章以降で、これらのツールでどういった情報を取得することができるのかご紹介させていただきます。
SAP 移行 ツール:① ATCについて
ATCはSAPが提供しているABAPのコード分析ツールです。ATCの概要については、すでに多くの情報がSAPのブログ等に記載されていますので、そちらを見ていただく事とし、ここではもう少し具体的に、ATCを実施することによりどのような事が把握できるのかをお伝えしたいと思います。
そもそも、なぜアドオンの改修が必要となるか、その理由から説明をさせていただきますと、SAP ECC6.0とSAP S/4HANAを比較すると、SAP S/4HANAはテーブル構造などがシンプルになるようにSAPが変更(SAPはこれをシンプル化と言っております)を行っており、それに伴いビューも変更されています。
そのため、今までSAP ECC6.0で動作していたアドオンプログラムが、そのままではSAP S/4HANA環境では動作しないということが発生する可能性がありますので、SAP S/4HANAの構造に合うようにアドオンプログラムを修正する必要があります。
では、本題のATCで把握できる内容に移らせていただきます。
以下にATCで把握できる代表的な内容を挙げさせていただいております。
① 標準テーブルに拡張項目の追加されている場合の影響について
② カスタムビュー内でシンプル化された標準テーブルを使用している場合の影響について
③ 変更された構造にあわせる必要のあるデータ操作の構文
④ フィールド長の変更で影響を受ける構文
⑤ 廃止や変更されるオブジェクトを使用している構文
⑥ ソート順を明確に指定する必要がある構文
上記のような観点でATCが問題点を出力することにより、どのプログラムを修正する必要があるのか把握することが可能となります。
ひとつ具体例として、BSEGに関わる分析内容をご紹介いたします。
SAP S/4HANAではBSEGに登録されるデータの内容がECCから変更されるため、アドオンプログラムでBSEGからデータをSELECTしている場合は、影響を調査した上でプログラムの改修を行うのですが、そのためのインプット情報として、ATCでは、BSEGをSELECTしているプログラムの特定を行い、一覧形式で表示することが可能となっています。
SAP 移行 ツール:② SI-Checkについて
次にSI-Checkについて説明をさせていただきたいと思います。
SI-CheckもATCと同様にSAPが提供しているツールとなりますが、ATCはアドオンコードを対象にしていたのに対し、SI-Checkは標準機能を対象にしています。
SI-Checkの機能について、誤解を恐れずに一言で言ってしまうと、現行のSAP ECC6.0環境がSAP S/4HANAに移行できるかどうかを確認するためのツールとなります。
つまり、現行のSAP ECC6.0環境で使用しているテーブルやデータを分析し、SAP S/4HANAに移行する際にエラーの原因となるような事があれば、それを教えてくれるツールということになります。
では、SI-Checkはどのような分析を行っているのでしょうか?
答えは簡単でもあり、難しくもあります。
まず、分析内容を確認するためには、こちらのサイトを参照してください。
そこには移行先のSAP S/4HANAのバージョン毎に、SI-Checkが分析する内容(これらをSAPはシンプル化項目リストと呼んでいます。)が記載されていますので、対象のバージョンをクリックするだけで、簡単に分析内容を確認することが可能となっております。
一方で、分析内容の詳細を確認しようとすると、約650もの項目があり、またその一つ一つを理解しようとすると、Noteを参照する必要がありますので、とても難しくなってしまいます。
簡単でもあり、難しくもある理由はご理解いただけましたでしょうか?
では、SI-Checkについても例をあげてご紹介させていただきます。
まずひとつ目は、”SI16: Logistics – PLM”というシンプル化項目を取り上げたいと思います。
この項目の内容を端的にお伝えすると、
“SAP S/4HANAに移行するにはBOMの製造バージョンに値が必須となりますので、レポートを使用してBOMを移行する必要があります。”
という内容となっています。
もし現行SAP ECC6.0環境のBOMに製造バージョンが登録されていない場合は、SI-Checkの結果にこの内容が出力されますので、SAP S/4HANAに移行をする際には、上記の対応が必要となってくるということになります。
2つ目の例として、” SI10 Logistics_PS”をご紹介したいと思います。
こちらの内容は、
“プロジェクト日程計画に関連するトランザクションが簡素化することに伴い、いくつかのトランザクションが廃止されますので、代わりのトランザクションを使用するようにして下さい。”
という内容となります。
こちらについては、シンプル化に伴い今まで使用していたSAP ECC6.0の機能が使えなくなるので、SAP S/4HANAでは代わりの機能を使用して運用する必要があるということになります。
以上2つの例を紹介させていただきましたが、SI-Checkには1つ目の例のようなデータ的な観点でのチェック、2つ目のような機能的な観点のチェックという特徴が挙げられるかと思います。
SAP 移行 で使用する標準ツール まとめ
ここまで、ATCとSI-Checkという2つのツールについてご紹介をさせていただきました。
それぞれの特徴をおさらいしますと、下記のようになります。
・ATC :アドオンコードの影響について分析を行うツール
・SI-Check :標準機能やデータに関する分析を行うツール
これらのツールを活用することが、効率的でリスクの低いSAP S/4HANAへのコンバージョンにつながることは間違いないと思います。
しかしながら、これらのツールを活用すれば完璧なコンバージョンにつながるというと、必ずしもそういう訳ではありません。
このブログでも少し触れておりますが、やはり分析を行う各ベンダーのノウハウ、例えばツールによる分析結果の解釈であるとか、今回ご紹介させていただいたツールだけでは得られないプラスαの情報というものがあってこそ、より効率的でリスクの低いSAP S/4HANAコンバージョンが可能となるのではないかと考えております。
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