SAP ECC のサポート期限は大丈夫?(Vol.21)
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SAP S/4HANAへの移行について、いつ移行するのが適切か、お悩みのSAP ERP Central Component 6.0(以下、SAP ECC6.0)ユーザ様は少なくありません。
業務改革を起点とした移行前提であれば、すぐにでも移行プロジェクトに着手する考えもありますが、やはり、システム移行の契機はサポート期限切れではないでしょうか?
しかし、一口にサポート期限と言っても、ハードウェア、OS、DB、アプリケーションのそれぞれにサポート期限があり、更に、アプリケーションの中でも、SAP製品のバージョンごとにサポート期限が異なります。
そこで、本ブログでは、意外と知られていないSAP製品のバージョンに応じたサポート期限やその対応を鑑みた適切な投資計画の立案方法について解説します。
目次
SAP S/4HANA 移行、いつまでに実施しますか?
SAP S/4HANAへの移行検討にあたり、以下のようなお悩みをよく耳にします。
- SAP ECC6.0のサポート期限(EOL / EOS)が延長されたけど、結局、いつまでに対応しないといけないの?
何から取り組めばいいの? - Greenfield(リビルド)とBrownfield(コンバージョン)は、どちらが最適?
- 移行費用はいくらくらいかかるの?
- 適切なコンバージョンSTEPとは?具体的に何をすればいいの? ……, etc.
今回は、その中から“いつまで”にどのような対応を実施する必要があるのか、SAP移行タイミングのご検討に必要となる要素にフォーカスしていきます!!
SAP ECCユーザに求められるサポート期限対応(OS、DB、ハードウェア、並行利用中のSAP製品)
SAP S/4HANA移行のタイミングについて、契機はやはりサポート期限(EOL / EOS)ではないでしょうか?
一口にサポート期限と言っても、以下の要素が考えられます。
- SAP ECC6.0のサポート期限
- OSやDBのサポート期限
- ハードウェアのサポート期限
- SAP ECC6.0と並行利用しているSAP製品(SAP BW、SAP BO、SAP HCMなど)のサポート期限
2020年2月4日、SAP ECC6.0のサポート期限の延長が発表されました。
これは、SAP Business Suite7(SAP ECC6.0含む)のメインストリームメンテナンスの提供期間を、それまでに予定していた2025年末から、2027年末へと変更するという内容であり、多くのSAP ECC6.0ユーザ様を驚かせ、そして、今後の対応についてどうしようか頭を抱えていらっしゃったユーザ様にとっては朗報となったものと存じます。
ただし、このメインストリームメンテナンスの提供期間の延長は、EHP6以上を対象としております。
EHP6未満のユーザ様が2025年以降もSAP ECC6.0を継続利用するためには、EHPアップグレード作業が必要となります。
EHPアップグレード作業にお金をかけるのであれば、これを機にSAP S/4HANAへ移行してしまった方がよいのではないかとのお考えもあるかと思います。
また、SAP ECC6.0と並行してSAP BWやSAP BOなどのSAP製品をご利用中の場合、それら製品のサポート期限はSAP ECC6.0とは別途で設けられていることをご存じでしょうか?
ご存じの場合、それら製品のバージョンに応じたサポート期限がいつなのか、把握しているでしょうか?
そこで、次項で各モジュールのサポート期限についてまとめてみました。
SAP ECC6.0や関連するSAP製品のサポート期限
SAP ECC6.0や関連するSAP製品のサポート期限は次の通りでした。(2023年10月1日時点)
Product Version | End of Mainstream Maintenance |
End of Extended Maintenance |
---|---|---|
SAP ERP Central Component 6.0 | ||
EHP1-5 FOR SAP ERP 6.0 | 2025年12月31日 | – |
EHP6-8 FOR SAP ERP 6.0 | 2027年12月31日 | 2030年12月31日 |
SAP NetWeaver | ||
SAP NetWeaver 7.30-7.40 | 2020年12月31日 | – |
SAP NetWeaver 7.5 | 2027年12月31日 | 2030年12月31日 |
SAP NetWeaver Business Warehouse | ||
SAP NetWeaver 7.30-7.40 | 2020年12月31日 | – |
SAP NetWeaver 7.5 ※1 | 2027年12月31日 | 2030年12月31日 |
SAP BW/4HANA | ||
SAP BW/4HANA 1.0 | 2021年12月31日 | – |
SAP BW/4HANA 2.0 | 2024年12月31日 | – |
SAP BW/4HANA 2021 | 2027年12月31日 | – |
SAP BusinessObjects Business Intelligence platform | ||
SBOP BI PLATFORM 4.1 | 2018年12月31日 | 2020年12月31日 ※2 |
SBOP BI PLATFORM 4.2 | 2022年12月31日 | 2024年12月31日 ※2 |
SBOP BI PLATFORM 4.3 | 2025年12月31日 | 2027年12月31日 ※2 |
SAP ERP 6.0 HCM | ||
EHP1-5 | 2025年12月31日 | – |
EHP6-8 ※1 | 2027年12月31日 | 2030年12月31日 |
SAP CRM 7.0 / SAP SCM 7.0 | ||
EHP1-2 | 2025年12月31日 | – |
EHP3-4 ※1 | 2027年12月31日 | 2030年12月31日 |
※1:2027年移行のサポートは、NetWeaver7.5と同様。詳細はSAP Note 1648480を参照
※2:End of Priority One Support Phase の期限
ご覧の通り、SAP BW、SAP ERP 6.0 HCM、SAP CRM 7.0、SAP SCM 7.0はバージョンアップ対応を実施することで、SAP ECC6.0と同様、2027年12月31日までメインストリームメンテナンスを受けることが可能となります。
注意が必要な点を申し上げると、SAP BW7.5未満をご利用のユーザ様は、既にサポート期限切れのため、すぐにでもバージョンアップ対応が必要となります。
また、2020年に弊社が実施したSAP ECC6.0ユーザ様向けアンケートにおいて、最も多かったMicrosoft社のOS/DBのサポート期限については以下の通りです。
Product Version | End of Mainstream Maintenance |
End of Extended Maintenance |
---|---|---|
Windows Server | ||
Windows Server 2012 | 2018年1月9日 | 2023年1月10日 |
Windows Server 2012 R2 | ||
Windows Server 2016 | 2022年1月11日 | 2027年1月11日 |
Windows Server 2019 | 2024年1月19日 | 2029年1月9日 |
SQL Server | ||
SQL Server 2012 ※Service Pack 4 |
2017年7月11日 | 2022年7月12日 |
SQL Server 2014 ※Service Pack 3 |
2019年7月9日 | 2024年7月9日 |
SQL Server 2016 ※Service Pack 2 |
2021年7月13日 | 2026年7月14日 |
SQL Server 2019 | 2025年1月7日 | 2030年1月8日 |
例えば、SAP ECC6.0 EHP6未満、且つWindows Server2012/SQL Server2012をご利用のユーザ様であれば、一気にSAP S/4HANAへ移行するのではなく、一旦、OS/DBのバージョンアップ対応を実施し、それと併せてEHPを6以上へアップグレードすることで2025年以降もSAP ECC6.0を継続利用可能となりますので、この延命された期間でSAP S/4HANAへ移行検討を進めるという選択肢も存在します。
どのような選択をすべきか、中長期を見据えたITロードマップを策定することでコスト・リソースの最適化を図ることが重要となります。
SAP S/4HANA移行に向けた適切な投資計画立案手法
上記に加え、ハードウェア/周辺システムのサポート期限対応、SAP ECC6.0のユニコード対応および現状抱えている課題への対応などを加味したITロードマップを立案することで、適切な投資を可能とします。
もちろん、SAP導入時期やOS/DBをはじめとする製品/サービスの保守ポリシーなどにより、システム環境や課題はユーザ様ごとに異なります。
そこで、弊社では、4つのフェーズからなる「ITロードマップ策定支援サービス」をご提供しております。
ITロードマップ策定支援サービス 概要
- ロードマップ作成計画フェーズ
・ロードマップ作成の背景/IT戦略上の位置づけ/現時点での制約事項/プロジェクト化対象 の確認 - 調査/検討フェーズ
・現状システムランドスケープの調査
・非機能要件レベルの整理(ハードウェア)
・現状システム課題の確認
・課題検討/対応方針策定
・システム中長期計画の仮作成
・Panayaを使用したSAP ECC6.0のアップグレード影響分析 - ToBeモデル作成フェーズ
・技術ロードマップ作成(IT製品、サービス)
・短期ToBeモデル作成(直近1年間)
・長期ToBeモデル作成(1年後~6年後までの5年間)
・概算コスト試算 - ロードマップ作成フェーズ
・プロジェクト化計画定義
・前提となる技術予測のまとめ
・必要となるリソース定義
・ロードマップの前提条件まとめ
・ロードマップの見直しが必要となる事項定義
これら4つのフェーズを経ることで、中長期を見据えた段階的な移行計画を立案し、適切なシステム投資を促します。
上記はあくまで弊社サービスの実施概要であり、サービスとしてご提供することを前提とした内容となっておりますが、ユーザ様が主体となって簡易的なITロードマップを作成することは十分に可能かと存じます。
その際のポイントとしては、単にマイグレーションやアップグレードの実施時期を定めて必要最低限のタスクをまとめるだけではなく、それらと併せて不要なアドオンを整理することでコストとリソースの最適化を図れるように計画を立てることが重要となります。
弊社では、Panayaを使用した簡易的なアセスメントサービスを無償でご提供しております。
SAP ECC6.0のマイグレーションやアップグレードに向けたITロードマップを立案する際には、ぜひお声がけください。
◆ ITロードマップ策定支援サービス:https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-erp-it-loadmap
◆ お問い合わせ:https://erp.dentsusoken.com/inquiry/