SAP NOTE (ノート) 適用の観点からS/4HANA移行を考える(vol.27)
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SAP移行を考える上で、SAP ECC6.0からSAP S/4HANAへの移行では、標準機能やサービスが複数拡張提供されています。
そのため、標準への修正や、過去の不具合修正など多岐にわたる変更が行われています。
ですが、移行時は各社毎の設定やバージョンによって、変更適用の調整方法等が異なってきます。
加えて、変更を加えることで、副次作用が働き、明示的に更に修正しないといけないこともあります。
そのため、各修正を実施する上での前提や副次作用をまとめたサイトがあります。
そのサイトでまとめられた修正パッチをSAPではNOTEと呼び、SAPが運営するサイトで一元管理されています。
本ブログでは、SAP S/4HANA移行における修正パッチであるNOTEの分類についてまとめていきます。
目次
SAP NOTE(ノート)とは? SAP NOTEの分類とは?
初めに、現行のSAP ECC6.0からSAP S/4HANAへの移行を検討する上で、【Simplification Item List】というSAP社発行の資料が特に重要になります。
こちらの資料に SAP S/4HANAに移行する上での変更箇所が取りまとめられているからです。
こちらの資料を基にSAP ECC6.0側やターゲットのSAP S/4HANA側で調整または変更が行われるためです。
SAP S/4HANA移行では、Simplification Item Listの内容を適用対象バージョンごとに、修正内容や副次作用が取りまとめられているNOTEという修正パッチを確認し、環境に適用することで移行が正常に完了します。
そのため、ただアプリケーションを入れ替えるだけではなく、NOTEの内容が大切になってきます。
SAP S/4HANA移行を行う上で、これらNOTEは非常に重要になるため、SAPに従事する各ベンダのメンバーは【SAP Support Portal】というNOTEが取り纏められているサイトを非常に多用します。
Support Portalの中で、NOTEは大きく次の3点に集約されています。
- オブジェクト修正NOTE
- マニュアル対応NOTE
- 修正方針説明NOTE
上記の3点がSAP S/4HANA移行に関わるNOTEとして大別され、それぞれのNOTEで対応方法が変わってきます。
それでは、それぞれ3つの概要を説明していきます。
SAP NOTE分類について①オブジェクト修正
はじめに、【オブジェクト修正NOTE】について説明していきます。
こちらのNOTEは、不具合を調整するプログラムソースの更新や追加、新たな設定変更におけるマスタの追加等が行われる際の修正が主になります。
修正適用にはトランザクションコード『SNOTE』というNOTEを適用する機能で、オブジェクトをSAPサイトからダウンロードし、機能内で適用が実施できます。
そのため、必要なNOTEでこのタイプの修正の場合は簡易に適用ができます。
このようなNOTEについて1つ例を挙げると、SAP S/4HANAに移行するにあたり、移行プログラムをECC側に適用することが必要となります。
その際に、新たな標準プログラムに必要なオブジェクトや関数の適用を行うなどがあります。
SAP NOTEの分類について②マニュアル対応
次に、【マニュアル対応NOTE】について説明していきます。
こちらのNOTEは、不具合の調整を行うプログラムの登録及び実行や、設定の調整のためにテーブルエントリのマニュアル調整などが主になります。
そのため、SNOTEでの適用は行えず、NOTEの文章や添付されている資料を確認しながら作業を実施します。加えて、実施する環境は本番環境に直接実施が必要な場合もあります。
そういった場合、SAP S/4HANA移行においてはサンドボックス環境を準備し、NOTEの適用と適用後の動作の確認を実施する必要があります。
よって、移行に際しサンドボックスの構築及び確認は非常に重要になります。
このようなNOTEについて1つ例を挙げると、SAP S/4HANAに移行する際に、設定のチェックを行う、【SICheck】という処理を実施します。
実施した結果の中に、初期出荷時に残っていた不要な設定を削除する必要があるというエラーメッセージが出る場合があります。
そのようなエラーに対し、設定をテーブルエントリから削除するプログラムの提供があり、NOTEの指示に従ってプログラムを登録し、プログラムを使用して不要なデータの物理削除を行うなどがあります。
SAP NOTE分類について③方針説明
最後に、【方針説明NOTE】について説明していきます。
こちらのNOTEは、S/4HANAのアーキテクチャの変更方針の記載が主になります。
とりわけ多いのは、使用不可となるトランザクション、テーブル、汎用モジュールやオブジェクト桁数変更です。
加えて、追加になるオブジェクトや新たにシンプル化されたテーブルの概要が記載されているNOTEもあります。
そのため、SAP S/4HANA移行後も確認しないといけないNOTEも存在します。
特に、SAP S/4HANAに移行すると、テーブルの概念等が大きく変わるため、アドオンプログラムの修正にも大きく影響を及ぼす可能性があります。
このようなNOTEについて1つ例に挙げると、会計領域で利用していた【BSEG】と呼ばれる明細テーブルが【ACDOCA】と呼ばれるテーブルに集約され、大きな変更がありました。
前述の変更が影響し、【Fiori】と呼ばれる新たなインターフェースで伝票を入力すると、BSEGには値が入らず、ACDOCAにのみ値が格納される項目が出てきました。
よって、その項目を取得するアドオンがあった場合に、取得先項目の変更が必要である旨がNOTEに記載されています。
まとめ
最後に、現在はSAP社から標準機能として提供されている機能が少しずつ充実してきており、拡充に対応する上での各種調整対応が移行時には求められてきます。
そのため、自社の環境設定を踏まえ必要な内容のNOTEを確認し、早いうちに整理を始めることで移行後の不具合を減らし、障害リスクを低減していく必要があると考えられます。
電通総研は、以前から利用しているPanayaというイスラエル発のSaaSサービスを利用し、現環境の利用オブジェクトから影響分析を行い、影響箇所ごとにNOTEを一覧化する機能を用いて機械的に整理を実施しております。
また、分析を実施するにあたり、オブジェクトの利用履歴である統計情報と組み合わせることで、顧客が実際に利用しているオブジェクトのみに絞った形で、対応が必要なオブジェクトを把握もできます。
把握したオブジェクトは、Panaya上確認が必要なオブジェクトと分類され、単体テスト対象として整理することも可能です。
現在、弊社はコンバージョンプロジェクトの提供以外にも、Panayaを利用してアセスメント(オブジェクトの棚卸等)を実施し、顧客の移行準備のサポートも行っています。
今後、より一層加速するであろうSAP S/4HANA移行において、修正箇所を網羅的に把握し、スムーズなSAP S/4HANA移行に繋げていければと考えています。
SAP S/4HANA移行トータル支援サービス:https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-s4hana-assessment