SAP S/4HANA への移行方法とは?(vol.25)

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社内の基幹システムにSAP ERPを利用していて、今後も継続利用したい場合、SAP ERPからSAP S/4HANAに移行する必要があります。
SAP移行の事前準備として、アプリの観点/インフラの観点から様々なことを考慮する必要があります。

本ブログは、どのような移行方法があり、その特徴は何かについて解説します。

SAP S/4HANA への移行方法とは?

SAP S/4HANAの移行方法は3つございます。移行方法毎にその特徴の概要を業務フローやオペレーション、データ、アドオン利用、本番移行時の観点で解説いたします。

  • リビルド
  • コンバージョン
  • 選択データ移行 

SAP S/4HANA への移行方法①リビルド

通称グリーンフィールドと呼ばれるリビルドはざっくりお伝えすると、SAP S/4HANAを新規に導入し、必要なデータのみをSAP ERPから移行する方法となります。
そのため、以下のような特徴があります。

  • 業務フローやオペレーション観点
    見直しが必要となりますがSAPのベストプラクティスベースでの再構築が可能なため、SAP S/4HANA移行と併せて業務改善を行う場合は有効です。
  • データ観点
    SAP ERPで蓄積してきたデータ全てを移行できないため、過去データを使用した分析が行えません。
    (移行可能なデータは、SAP標準ツールやアドオンを使用し移行します)
  • アドオン利用観点
    アドオンは新規で作成が必要となるため、SAP標準機能でカバーできない場合は開発コストが大きくかかります。
  • 本番移行時観点
    事前にSAP S/4HANAを構築できるため、必要なカスタマイズの実施や事前にデータ移行を行うことで本番移行時にダウンタイムの短縮が可能です。
  • 採用コスト
    リビルドはSAP社提供の標準ツールを使用するため、利用にあたって費用の発生はございません。 

SAP S/4HANA への移行方法②コンバージョン

通称ブラウンフィールドと呼ばれるコンバージョンはざっくりお伝えすると、SAP ERPをそのままSAP S/4HANAに転換する方法となります。
そのため、以下のような特徴があります。

  • 業務フローやオペレーション観点
    現行がそのまま引き継げるため、要件に応じた範囲で見直しが可能です。
    そのため、現行の業務フローやオペレーションを大きく変更しない場合は有効です。
  • データ観点
    SAP ERPで蓄積してきたデータ全てを移行できます。
    そのため、過去データを使用した分析等のデータ活用が可能です。
  • アドオン利用観点
    SAP S/4HANA化によりテーブル構造等が変わっているため一部調整が必要となりますが、アドオンが引き継げるため、既存のIT資産の再利用が可能です。
    ただし、修正数によってはコストが大きく増加するため現在利用されているかどうかの選別が重要となってきます。
  • 本番移行時
    事前にSAP ERP環境にてコンバージョン前対応が必要になります。
    コンバージョン処理は本番移行時になるため、事前にリハーサル移行を行いダウンタイムが移行期間内に収まるかの調整と確認が必要となります。
    (データ量や利用機能によりダウンタイムが長期化します)
  • 採用コスト
    コンバージョンはSAP社提供の標準ツールを使用するため、利用にあたって費用の発生はございません。

SAP S/4HANA への移行方法③選択データ移行

一部ベンダーではブルーフィールドと呼称して扱っている選択データ移行は、ざっくりお伝えすると、要件に合わせてSAP ERPからSAP S/4HANAに移行するデータの選択ができる方法となります。そのため、以下のような特徴があります。

  • 業務フローやオペレーション観点
    現行がそのまま引き継げるため、要件に応じた範囲で見直しが可能です。
    そのため、現行の業務フローやオペレーションを大きく変更しない場合は有効です。
  • データ観点
    SAP ERPで蓄積してきたデータすべてを移行できる他、一部モジュールだけを抽出するなど範囲を限定した移行が可能です。
    また、複数のSAP ERPのデータをSAP S/4HANAに統合することも可能です。
  • アドオン利用観点
    SAP S/4HANA化によりテーブル構造等が変わっているため一部調整が必要となりますが、アドオンが引き継げるため、既存のIT資産の再利用が可能です。
    ただし、修正数によってはコストが大きく増加するため現在利用されているかどうかの選別が重要となってきます。
  • 本番移行時
    事前にSAP S/4HANAを構築しデータ移行が可能なため、本番移行時には差分データのみを移行することでニアゼロダウンタイムが実現できます。
    そのため、ダウンタイム要件が厳しい場合は本移行方法が有効です。
  • 採用コスト
    選択データ移行はSAP社に認定されているソリューションベンダーのツール及びSAP社のDMLTサービスを利用する必要がございます。
    そのため、ソリューション利用費用がかかります。また、移行時の要件の複雑性によって費用が前後いたします。 

SAP S/4HANA への移行方法 まとめ

これまで各移行方法の概要について解説をさせて頂きました。比較した結果については下表の通りとなります。

ご参考までに○×△と理由を記載させて頂いておりますが、現行システムの状況や今度どのように活用していきたいかによって、判定が変わるかと存じます。
そのため、参考情報とご理解ください。
例えば、データを引き継ぐ重要性が高くなければデータ観点におけるリビルドの×は問題ではなくなります。

今回は移行方法について解説して参りました。
読者の皆様のSAP S/4HANA移行検討の一助となれば幸いです。