SAP 移行アプローチ「コンバージョンとリビルド」の実現方法とは?(vol.6)

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SAP ECC6.0のサポート終了がアナウンスされる中、SAP ERPユーザは基幹システムの見直しを迫られる状況となっています。
他パッケージへの乗り換えという選択肢もありますが、SAP S/4HANAへ移行する場合のアプローチとしては、大きく「SAP S/4HANAへのコンバージョン」「SAP S/4HANAのリビルド導入」が考えられます。

本ブログでは、SAP移行のアプローチである、コンバージョン、リビルドそれぞれのメリット/デメリットを考察し、実現方法を解説していきます。

SAP 移行 アプローチの分類

1990年代後半から、ERPの導入がブームとなり、基幹システムをSAP(当時はR/3)やその他ERPパッケージで構築するお客様が増え始めてきたと記憶しています。
そのSAPユーザがSAP ECC6.0のサポート終了や、昨今の新技術・デジタル化推進の流れの中で、基幹システムの見直しを迫られている状況となっています。
ただ、現実的には経営層に対して刷新の必要性を説得できる情報を提供できず、見直しが進まない状況にあるということも、様々なお客様から、耳にすることがあります。

今回は、その刷新の方法について、大きな考え方の違いを分類し、考察していきます。
テクニカルな観点で分類していくと、「ブラウンフィールド」「グリーンフィールド」「選択データ移行」といった表現がされることが多いと思いますが、今回は考え方を分かりやすく単純化するために、大きく2つの観点に分けたいと思います。
1点目は、現行資産を生かしながらSAP ECC6.0からSAP S/4HANAに移行する「コンバージョン」の方法であり、2点目は新たに業務プロセスを定義しながらSAP S/4HANAを新規導入する「リビルド」の方法です。
以降、そのメリット/デメリットを定義していきます。

コンバージョンによる実装

コンバージョンによる方法は、SAP ECC6.0環境のアドオンプログラムなどの資産や、カスタマイズ設定を有効活用しながら、SAP S/4HANA環境への移行を行う手法となります。
SAPや、各導入パートナー会社もそのための各種ツールを提供していますが、ツールを利用したテクニカルな変換作業が主となるイメージです。

メリットとしては、リビルドによる手法と比較した場合に、切り替えに関する準備作業やテスト工数、コストを削減できる点が挙げられます。
また、基本的にはSAP ECC6.0時代の挙動を引き継ぐ方法となるため、ユーザ部門への業務面での負担も抑えられることとなります。
さらには、ツールを利用した作業となりますので、通常のERP導入にみられるような様々なリスクも、比較的おさえることができると言えます。
実際、この方法を採用し、SAP S/4HANAへのバージョンアップを実現するお客様も多数いらっしゃいます。

一方で、デメリットとしては、現行踏襲に近い方法となるため、新しいSAP S/4HANAの機能の良さを享受できる範囲が狭まってしまう、ということがあります。
例えば、高速なMRP計算機能を利用することで大幅なパフォーマンス向上を享受できる、ということがあれば運用面などで目に見えるメリットも挙げられますが、単純なコンバージョンであれば、冒頭申し上げた通り、刷新のメリットを経営層に対してアピールしづらい、と言えるかもしれません。

リビルドによる実装

次に、リビルドによる方法を考えてみたいと思います。
この方法は、既存のSAP ECC6.0環境の設定や、その運用にとらわれることなく、新たにSAP S/4HANAを利用した業務プロセスを定義し直し、導入する手法となります。
この方法を採用されるお客様は、SAP ECC6.0を長年利用していく中で、自社のビジネスプロセスや、経営層の求める指標が変化していき、現行システム機能とのギャップが非常に多く発生している、という課題を抱えていらっしゃるケースが多いと思われます。
また、SAP ECC6.0のアドオンプログラムの改修を重ねた結果、スパゲッティ状態となり保守性が非常に悪くなっているようなケースや、SAP ECC6.0の機能不足を周辺システムでカバーしてきた結果、様々なシステムが乱立し、システム運用コストが上がってしまっている、というケースもあるようです。
それらの課題をゼロクリアして解決したい、という考え方に基づきお客様がとられる方法となります。

メリットとしては、SAP S/4HANAの新機能を利用することで、最新技術の恩恵を被ることができるため、DX(Digital Transformation)の推進に向いている方法である、と言えます。
また、刷新のメリットを経営層にアピールしやすい面もあるとも言えるでしょう。
逆にデメリットとしては、お客様がSAP ECC6.0を知っていることで、通常のプロジェクトと比較して短縮できる工程はあるにせよ、ほぼ新規導入に近い作業となるため、コンバージョンとの比較では期間も費用かかりますし、当然リスクも上がります。
また、全くの新規導入ではない点も逆に曲者であり、既存アドオンを集約していく方法の検討や、プロトタイピングで工夫が必要な点など、リビルド特有の考慮をする必要があります。

SAP 移行 アプローチ「コンバージョンとリビルド」の選び方 まとめ

今までそれぞれのアプローチについてメリットとデメリットを確認してきました。
どちらの方法が適しているかは、お客様各社各様でもあり、一概には言えない面はありますが、一般的には、以下のような考え方で大別する事ができます。

コンバージョンの採用が望ましいと思われる状況

・現行システムに対する課題はあるものの、業務プロセス全般はECC6.0を利用して無理なく運用できている。
 しかしながら、保守切れに対応する観点でシステムを刷新する必要があるような場合

・システムの刷新に対して期間や費用をあまりかけたくない、もしくは業務部門への負担をかけたくないような場合

リビルドの採用が望ましいと思われる状況

・現行システムの運用と現実のビジネスの乖離が大きく、そのギャップの多くを人手の作業でカバーしている、
 もしくは各現場の個別ツールで対応するような状況となっているような場合

・経営層のDXに対する理解があり、新しい技術を積極的に取り込んで全社DXへの活動が活発化しているような場合

次のバージョンへの移行を、他のERPパッケージにあてはめて考えた場合、パッケージの特性上、現行機能の踏襲の手法であったとしても、プログラム修正やそのテストの工数が、結局新規導入に近いボリュームになってしまうものもあります。
それと比較すれば、SAP ERPは比較的バージョンアップしやすいパッケージであると思います。
ですから、費用やリスクをおさえてコンバージョンにより移行を実現することや、新技術の利便性を求めてリビルドで移行を実現すること、どちらの方法も採用することができる、選択肢の広さを持っています。
SAPパートナーである弊社としましては、どちらの手法であったとしてもお客様をサポートが可能ですので、SAP S/4HANAへの移行を一緒にお手伝いさせていただきたいと考えております。

SAP S/4HANA移行トータル支援サービス:https://erp.dentsusoken.com/solution/sap-s4hana-assessment