20年来の基幹システムをRISE with SAPに移行
DX推進の基盤整備とシステム運用の効率化へ
マリンエレクトロニクス製品やネットワーク製品などの製造・販売を手がける株式会社光電製作所。同社は電通総研の支援のもと、SAP ERP(ECC6.0)からSAP S/4HANA Cloud Private Editionを中核とするクラウドサービス「RISE with SAP」への移行プロジェクトを完遂しました。新システムにより月次会計処理やMRP実行などの処理の高速化を実現しながら、システム総保有コスト(TCO)の最適化に取り組んでいます。

企業プロフィール
1947年(昭和22年)、電子技術の先駆者であった海軍技術研究所と、電波運用の中心的役割を担った逓信省および国際電気通信株式会社の技術者により創業。現在はレーダー、魚群探知機、GPSといったマリンエレクトロニクス製品を中心に、超音波側壁測定装置などの産業用エレクトロニクス製品、陸上用無線方位測定装置などのネットワーク製品の開発・製造・販売を手がける。2020年には同社のマリンレーダーがJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」のカプセル探知に採用された。
https://www.koden-electronics.co.jp/
SAPシステムの継続利用とDX基盤の整備に向け
RISE with SAPへの移行を決断
「電波・音波・光」によるセンシング技術と情報信号処理技術を核に、世界初、国内初の製品を生み出してきた光電製作所。同社は会計、販売、購買、生産、プロジェクト管理領域の業務を司る基幹システムとして2005年にSAP R/3を導入し、2014年にはSAP ERP(ECC6.0)にアップグレードしました。
以来、10年にわたりECC6.0を利用し続けてきましたが、2025年末に迫ったサポート終了※を見据えてSAP S/4HANAへの移行を決断。SAP S/4HANA Cloud Private Editionを核とするクラウドサービスRISE with SAPにコンバージョンするという判断について、管理グループ 情報システム部 DX推進課 課長の角谷雄大氏は次のように語ります。
「お客様との取引への影響が出ないよう、20年近く使い続けたSAPシステムの継続利用を最優先とし、グループ企業の経営情報や基幹業務の共通化を進めることにしました。また、これまでオンプレミス環境で一般的なデータベースを自社サーバーで運用してきましたが、インメモリデータベースになるとさすがにハードウェア運用負荷が高いと考え、システム運用の最適化を見据えてクラウド化を決めました」
※SAP ECC 6.0の利用バージョンが、EhP0 ~ EhP5の場合は2025年末まで、EhP6以上の場合は2027年末までがメインストリームメンテナンス期間となります。
SAP S/4HANA移行の実績、技術力、コストと精度の高いプロジェクト計画で電通総研を採用
光電製作所はRISE with SAP移行プロジェクトのパートナーに実績、技術力、コストなどを総合的に判断して電通総研を採用しました。
「エンジニアのリソースを確保し、2024年4月必達のスケジュールにコミットメントをいただけたためです。事前にアセスメントツール(Panaya)によって移行作業の影響範
囲特定と優先度付けを実施し、精度の高いプロジェクト計画を提示していただけたことも評価のポイントになりました」(角谷氏)
2023年5月にスタートしたプロジェクトには経理や購買部門の担当者がキーユーザーとして、既存環境と新環境でのデータの整合性を確認するテストシナリオの作成とテストに深く関与しました。経理部 業務管理課 主査の奈良歩氏は「SAP S/4HANAで財務会計(FI)の領域は大きく変わるため、細かい検証が多数発生しました。エラーを1つひとつ潰しながら確認していく作業に追われました」と語ります。
管理グループ 人事総務部 人事総務課 主任の髙野周平氏も「従来のトランザクションが使えなくなる、表示内容が変わる、得意先マスタと仕入先マスタがBP(取引先)マスタに統合されるなど変更箇所が多くあり、既存環境との違いを意識しながらテストを実施しました」と振り返ります。管理グループ 経理部 経理課 主任の外川いち代氏は「FI領域で外貨管理の設定の追加が発生したり、与信管理の設定をゼロからやり直したりと細かい変更が多数発生しましたが、電通総研のサポートで問題を解決できました」と語ります。またユーザー教育は、電通総研が作ったトランザクション単位のマニュアルをベースにセクション担当が各部門に使い方を展開したため、大きな混乱はなかったといいます。
RISE with SAPへのコンバージョンと周辺システムのMicrosoft Azure移行を業務チーム4名、システムチーム2名の計6名で乗り切った約1年のプロジェクトにおいて、角谷氏は電通総研の迅速なレスポンスを評価しています。
「当初はオンライン中心でのやり取りに慣れず電通総研との意思疎通に苦労しましたが、対面での打ち合わせを経てからは円滑になりました。移行リハーサルでは、予期せぬエラーが発生するなどの課題も発生したものの、コミュニケーションを取りながら解決できました」
クラウドベースのRISE with SAPにより月次会計処理を高速化、TCOの最適化を推進
2025年5月に本稼働を迎えた新システムへの移行後は、インメモリデータベース(SAP HANA)の効果もあり、在庫一覧の取得は従来の17秒から3秒に短縮。MRPの実行時間は20分55秒から2分45秒へと10分の1近く、品目元帳決済の時間も60分から10分と6分の1に短縮されました。
「月次決算も従来の8時間から6時間へと2時間近く短縮され、経理部門の負担が軽減されました」(髙野氏)
システム運用においてはバージョンアップ対応が自社で可能となり、2025年1月にバージョン2022から2023へのバージョンアップを実施。クラウド化による運用コストの低減、TCOの最適化が進む見込みです。
「現時点でのコストはRISE with SAPの利用料によって上がっているものの、バージョンアップやサーバーの運用保守などトータルでみると、今後は下がっていくと期待しています」(角谷氏)
今後はグループ会社への展開も視野に入れながら、経営データ分析の高度化、業務プロセスの可視化、自動化などRISE with SAPを活用したDX構想を描いています。
「2025年度からはDX推進課に若手技術者が2名配属になり、体制も強化されました。今後は担当者の成長を促しながら、蓄積されていくデータを活用してビジネス変革
に資する経営陣への情報提供や、業務の省力化につながる活動を進めます。電通総研には引き続き、さまざまなIT施策の支援を期待しています」(角谷氏)

公開日:2025年7月
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