SAP バリアントコンフィギュレーション とは?(vol.78)

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顧客ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短縮化が進む中、時代の変化に追随すべく、製品の仕様は複雑性を増し、より柔軟でスピーディな対応が求められるようになりました。このような背景から、IT部門はマスタの設定/変更に追われ、マスタの管理が煩雑になってしまっているケースが散見されます。
SAP ERPのバリアントコンフィギュレーション機能では、製品の仕様を特性として管理し、品目に割り当てて選択可能とすることで、様々なパターンの注文に対応することができます。メンテナンス性も高く、仕様の世代管理も行うことができます。

本ブログでは、SAP ERPのバリアントコンフィギュレーションについて、機能/マスタの設定方法/留意点などを解説します。

SAP バリアントコンフィギュレーション とは?

SAP ERPのバリアントコンフィギュレーションとは、製品の選択可能な仕様を特性として登録し、注文の都度 異なる仕様を選択させることで、必要な構成品の手配や作業を製造工程へ連携できる機能です。

例えば、パソコンを購入するケースを考えてみましょう。OS/CPU/メモリー容量/ハードディスク容量/本体のカラー/付属品など、多種多様な選択が可能です。この取りうる選択肢の組み合せをすべて品目として登録する事が必要となった場合、その登録件数はとても多くなってしまいます。
また、新たな仕様が追加となった場合、既存の仕様と組み合せたすべての品目を登録することが必要となり、それに紐づく構成品の設定や製造に必要な作業の設定まで含めると膨大な作業が必用となります。

他のERPパッケージでは、色やサイズなど、有限の仕様を設定できるものもありますが、SAP ERPのバリアントコンフィギュレーションでは、必要な仕様をすべて定義し、品目に割り当てて選択可能にすることができます。これにより、品目の登録数増加を防ぎつつ、仕様改訂にも柔軟に対応する事ができるようになっています。

SAP バリアントコンフィギュレーション のマスタ構成

本章では、バリアントコンフィギュレーション機能を使う上で設定するマスタについて解説します。

  1. 特性
    まず、品目で選択可能な仕様を特性として定義します。(パソコンを例にすると、OS/CPU/メモリー容量などが特性にあたります)
    次に、その特性の選択肢を特性値として登録します。特性値は、文字型/数値型/日付型などの書式から選択できます。また、初期値とする特性値の指定や、特性値の指定を必須とするかどうか、1つの特性に対して複数の特性値を選択可能にするかどうかなどの設定が可能となっています。
  2. クラス
    品目と特性の紐づけは、クラスを通して設定します。1つの品目に対して複数のクラスを割り当てることができます。
  3. 特性グループ
    特性グループを登録し、特性を割り当てることでグルーピングし、販売伝票登録時の画面表示を整理することができます。特性グループがタブ表示され、割り当てられた特性が表示されます。
  4. 対象依存
    対象依存に処理を記述することで、バリアントコンフィギュレーションに関する様々な処理を実装できます。4つの依存タイプが存在しており、タイプ毎に異なる機能が用意されています。

    ①依存タイプ:前提条件
    特性や特性値に割り当てて実装します。そこに条件式を記述することで、販売伝票の登録時に、割り当てられた特性や特性値の表示/非表示を切り替える事ができます。
    例えば、カラーとサイズという特性があり、カラー:赤はサイズ:S/Mが選択可能、カラー:青はサイズ:S/M/Lが選択可能という場合、サイズの特性値であるLに前提条件を割り当て、条件式にカラー:青と設定します。すると、青を選択した場合のみ、サイズ:Lが表示されます。不要な選択肢を非表示とすることで、選択を容易にし、特性値の組み合せ間違いを防ぐことができます。

    ※特性値:Lは、カラーが青の時しか表示させない場合の設定例

    ②依存タイプ:選択条件
    部品表(BOM)の子品目や作業手順に割り当てて実装します。そこに書かれた条件式によって子品目や作業を決定する事ができるようになります。

    ③依存タイプ:手順
    この対象依存で実施できる事は多々あります。例えば特性の初期値を動的に変更させたり、ある特性値の選択により別の特性の特性値を決定することもできます。また、子品目の員数を変更したり、作業のランタイム設定、仕様に基づいた販売単価の設定なども可能です。

    ④依存タイプ:制約
    特性値の組み合せに制限をかけたい場合などに使用します。許可する組み合せ、もしくは禁止する組み合せを定義することで、仕様の組み合せを制限します。

  5. 選定プロファイル
    バリアントコンフィギュレーションで使用する品目に設定し、仕様選定時の基本設定を行います。ここに処理モードという設定値があり、「クラシック(標準)」 / 「拡張バリアント選定」から選択します。この設定値により、有効となる機能、販売伝票登録時の特性値割当画面イメージなどが変わります。例えば、新しい拡張バリアント選定では、シミュレーション機能が使用可能になります。

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SAP バリアントコンフィギュレーション 使用時の注意点

本章では、バリアントコンフィギュレーションの機能仕様における留意点を2つ解説します。

  1. 各マスタの最大数
    バリアントコンフィギュレーションの各マスタを設定する中で、登録数に制限のあるものがあります。登録する仕様が多岐にわたる場合は確認が必要です。

    ①品目に割り当て可能なクラスの数:最大3,276件
    ②クラスに割り当て可能な特性の数:最大999件
    ③特性に対する特性値の数:999件
    ④特性グループに割り当て可能な特性の数:最大999件

    この中で特に注意すべきは、②クラスに割り当て可能な特性の数です。パフォーマンスを考慮すると50件程度に収めるのが望ましく、マスタ設定を進める中で検討が必要なポイントとなります。

  2. 仕様改訂
    仕様改訂についても検討が必要です。SAPでは各マスタの修正時に、事前に登録しておいた変更番号を指定し、その中で設定した有効開始日が到来したかどうかで修正内容の適用有無を判定することができます。この有効開始日と比較される日付は、明細データに保持する品目利用可能日との比較になります。品目利用可能日は納期から出荷、輸送リードタイムをマイナスして算出される日付であるため、もし、伝票登録日ベースで仕様改訂の適用有無を判断する場合は、アドオンが必要になります。

まとめ

ここまで、バリアントコンフィギュレーションの機能/マスタ設定/留意点について解説して参りました。
実際の導入時には、より詳細な要件の確認/Fit&Gap/テストが必要になります。
バリアントコンフィギュレーション機能についてご興味をお持ちの方は、是非、電通総研へお声掛けください。
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